フランチャイズシステムは、フランチャイズ本部と加盟店が理念を高次元で共有し、正確に理解し合えていることが重要です。
しかも、長期に渡ってビジネスパートナーとして手を握り合うためには、定期的に「理念」をフランチャイズ本部が発信し続けることが必要です。
つまりフランチャイズ本部のブレない姿勢を、加盟店へ植え付け続ける必要があるということです。
今回は、その重要性と具体的な手法について触れていきます。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
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1.加盟者募集はフランチャイズ本部が自力で行う
自信を持ってビジネスモデルを確立させ、フランチャイズ本部を立ち上げると、次の課題は加盟者の誘致です。
ここで確固たる理念やビジョンがブレてしまうと、本部の考える理想のビジネスは完結しません。
むやみやたらと加盟者集めをするだけでは、後のフォロー、加盟者の軌道修正に労力を取られます。
加盟者開発だけを請け負い、人数を集めることには長けている業者も存在します。
結果として「理念」が共有できない加盟者が多く発生し、パートナーシップの関係を維持できない事例も散見されます。
加盟後のフォローを、力技で抑え込むつもりかもしれませんが、 フランチャイズ本部の本来の役割は、ビジネスモデルの刷新、新商品や新サービスの開発に時間・人・労力を掛けることにあるはずです。
なので、焦る気持ちはグッと抑えて、本質的な部分で「理念」を共有できる加盟者を、自力で探すことが賢明です。
なお、フランチャイズ展開の成否を左右する加盟店審査の考え方について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
2,フランチャイズ本部経営者の役割は「理念」の発信
人には、「必ず飽きる」という習性があります。
さらに「不都合なことを忘れる」ことで、気持ちを安定させる能力も備えています。
それらの前提に立った上で、フランチャイズ本部の経営者(社長)のまずやるべきことは、「理念」を加盟店に向かって語り続ける、発信し続けることなのです。
これは会社の壁に掲げている「経営理念」を、毎朝の朝礼で、全員で唱える行為でありません。
角度を変え、言葉を変え、今起きている課題や事象から、社長自らの言葉で、経営理念に立ち戻りながら、語り続けることです。
自社の社員にはもちろんのこと、加盟店に対しても発信し続けることが必要です。
この発信が続かなければ、相手(加盟店・社員)はす ぐに忘れてしまいます。
言葉では「理念」を分かっているつもりでも、本質的な部分は忘れていくものです。
飽きさせない、忘れさせない為に、継続した魂のこもった言葉の発信が、フランチャイズ本部の社長が最もやるべきことです。
なお、フランチャイズ本部立上げ初期のFC本部が加盟店募集競争に勝つために発信すべき情報について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
3.加盟店へ「理念」を浸透させる仕組みづくり
フランチャイズ本部の社長が、毎日加盟店へ出向いて、「理念」を発信し続けることは物理的に不可能です。
その為に、フランチャイズ本部会社の仕組みとして、どう加盟店へ「理念」を発信し続けることができるのか、ここを機軸に組織づくりを進めていかなければなりません。
業種・業態によって組織の在り方は異なるでしょう。
そこは自社で模索するしかありません。
大手フランチャイズ本部がSV制度の重要性に気づき、行き着いた理由の本質はここにあるのです。
オペレーションのチェック、QSCの確認、接客対応、新商品・新サービスの提案、人材育成、その他経営指導等、SVの業務は多岐に渡りますが、全てが「理念」に結びついており、様々な指導項目を通じて、「理念」を唱え続けているのです。
SV制度のあるべき姿の原点です。
なお、フランチャイズ展開の成功に不可欠なSVの役割や求められる資質について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
もちろん必ずしもSV制度が全てはないと思います。
テクノロジーの進化でコミュニケーションの取り方にも、様々なツールが活用できる時代です。自社のビジネスモデルに合わせた「理念」を浸透させる工夫や組織づくりに尽力いただきたいものです。
4.新しいフランチャイズビジネスの在り方 加盟店との関係性
これまでのフランチャイズビジネスといえば、契約を盾にした力技で、加盟店を統制してきました。
しかし、そのような統制方法は、時代にそぐわなくなってきています。
時代は変化し、以下のキーワードがビジネスの中で使われるようになりました。
・多様性
・個人の発信
・働き方改革、「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ
・ソーシャルディスタンス
・関係性マーケティング
・サブスクリプション
これらに共通している点は、自己責任で、其々の考え方や多様性を受け入れ、一定の距離感を保ち、「理念」の本質に共感しあえていて、緩いパートナーでありながらも長く付き合う関係性、と言えるでしょう。
これからのフランチャイズモデル、加盟店との関係性の在り方も、これらのように変わりつつあるのではないでしょうか。
なお、加盟店とのパートナービジネスを展開するフランチャイズ本部が意識すべきことについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
まとめ
フランチャイズ本部は、「消費者の変化」と「加盟者の変化」の両方を掴む必要があります。
二刀流で非常に高度なビジネスモデルです。
どちらかが欠けては機能しません。
フランチャイズは、通常のビジネスと異なり、加盟店が個人であればその人の人生に、法人であればその会社の命運に大きな影響を与えます。
加盟店を幸せにすることもあれば、不幸にすることもあるビジネスなのです。
ですから、厳しい言い方ですが、「消費者の変化」と「加盟店の変化」の両方に対応できないのであれば、 フランチャイズ本部は立ち上げるべきではないのです。
そしてフランチャイズ本部と経営者は、その影響力や社会的責任に応えるためにも、 あらゆる言葉で自社の掲げる「理念」を、魂のこもった言葉で発信し続けることを、決して怠らないでいただきたいのです。