「フランチャイズ」という言葉は、ほとんどの人が一度は耳にしたことがあるでしょう。
しかし、弊社の経験則では、「フランチャイズってなに?」「どんな仕組みなの?」「フランチャイズ展開のメリットは?」といった質問に対して正確に答えることができる人はほとんどいません。
フランチャイズ本部立ち上げに取りかかる前に、その前提としてフランチャイズの仕組みを正しく理解しておかなければなりません。
そこでこの記事では、フランチャイズの仕組みからフランチャイズ展開のメリット・デメリット、変化するFC展開のあり方までを解説します。
なお、フランチャイズ本部の立ち上げ方について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
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1.そもそも「フランチャイズ」ってなに?
実は、日本では「フランチャイズ」という言葉に明確な定義は存在しません。
国内においては、日本フランチャイズチェーン協会が公表している定義が用いられることが一般的です。
内容を見てみましょう。
(社)日本フランチャイズチェーン協会(JFA)の定義
フランチャイズとは、事業者(フランチャイザー)が、他の事業者(フランチャイジー)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう。 |
言葉が難しいため、この定義を簡単に要約すると、ポイントは以下の3つに整理することができます。
- ①フランチャイズ本部から加盟者にフランチャイズパッケージ(商標、経営ノウハウ、継続的な経営サポート等)を提供する
- ② ①の見返りとして、加盟者は本部に一定の対価(加盟金、ロイヤリティ等)を支払う
- ③ 本部と加盟者は各々独立した事業体であり、契約に基づき共同事業を行う
「フランチャイズ」と聞くと難しく感じますが、「本部が加盟者に対してサービスを提供する」一方、「加盟者は本部に対して対価を支払う」という関係ですから、通常の商取引と何ら違いはないことがわかります。
フランチャイズ展開を進めていくにあたり、まずはこの前提をしっかりと理解しておきましょう。
2.フランチャイズ展開のメリット・デメリット
続いて、フランチャイズ展開するメリットとデメリットを確認します。
フランチャイズ展開のメリット
フランチャイズ展開のメリットとしては、次の4点があげられます。
メリット① ブランド力アップ
フランチャイズ展開によって同じブランドの店舗が増えれば、お客様からみたブランドへの信頼感が増すことになります。
スピーディーな店舗展開によって一定のシェアを確保することで、ブランド浸透、ライバルとの差別化も可能です。
メリット② 利益率アップ
一般的に、フランチャイズ本部は加盟者から加盟金やロイヤリティを徴収します。それに対する原価はほとんど無いため、本部の利益率は直営店による展開時と比べて向上することになります。
メリット③ スケールメリットの享受
フランチャイズ展開によって店舗数が増えると、取引先との交渉力が高まり、有利な条件で取引ができるようになります。原材料の仕入、広告宣伝、店舗工事、情報システム導入など、様々な面でスケールメリットを享受することができるようになります。
メリット④ 環境変化への対応力アップ
フランチャイズシステムでは、加盟店舗の経営責任は加盟店が負います。仮に、急激な環境変化によってチェーンの売上が激減したとしても、加盟店舗で生じた損失は加盟店が負うことになり、本部単体のダメージを抑制することができます。
また、店舗投資も加盟店がするため、本部の投資負担も減少します。その分、借入金を抑えた経営が可能です。
以上から、直営チェーンと比較して環境変化への適応力を高めることができます。
なお、現在の経営環境を踏まえると、今後店舗ビジネスはフランチャイズシステムを導入し、環境適応力を高めていくことが不可欠です。
この点について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
フランチャイズ展開のデメリット
フランチャイズ展開のデメリットとしては、次の2点があげられます。
デメリット① 加盟店のミスがブランドイメージ低下に繋がる
本部直営のお店ではなくても、加盟店は本部の看板を掲げて営業しています。
本部は加盟店側にマニュアルを展開させていますが、その裁量は各加盟店によるものなので、サービスや提供内容に差が出てきてしまう場合があります。
また、加盟店側が顧客とトラブルになった際には、本部の看板を掲げて営業していることから、本部のブランドイメージが低下する恐れもあります。
次の「デメリット②」にも繋がりますが、本部は的確なアドバイスや研修、指導への時間と労力を惜しまないようにすることで、このデメリットが生じる確率を下げることができます。
デメリット② 加盟店との信頼関係維持に人員・時間・労力がかかる
本部と加盟店は対等なパートナーです。
フランチャイズ契約があるとはいえ、命令をすることはできません。それぞれの取り組みの必要性を説明し、説得して行動してもらうことが必要です。
そのためには、パートナーである加盟店の売上が上がるために、「指導・アドバイス」はコストを惜しまず取り組んでいかなければなりませんん。
なお、フランチャイズ本部としては加盟者視点から見たフランチャイズのメリット・デメリットも押さえておくことが大切です。
3.フランチャイズ展開前に確認!フランチャイズを取り巻く環境の変化
フランチャイズ本部立ち上げの手順の説明に入る前に、フランチャイズ展開を取り巻く環境の変化を確認しておきましょう。フランチャイズ展開のあり方に影響を及ぼすポイントとしては次の3点があげられます。
これからフランチャイズ化をはじめるのであれば、この環境変化を踏まえてフランチャイズ本部構築を進めていくことが大切です。
この内容について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
環境変化① フランチャイズ本部間の競争激化
ここ数年、フランチャイズ本部は増加の一途です。以下のグラフをご覧ください。
出典:フランチャイズチェーン統計調査
(一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会)を基に作成
こちらは、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会(JFA)が公表しているフランチャイズチェーン統計調査を基に、フランチャイズ本部のチェーン数、店舗数、売上高をまとめたものです。
一見して分かる通り、フランチャイズ本部の数は右肩上がりで推移しています。
フランチャイズ市場が拡大している証しでもありますが、フランチャイズ本部間での加盟者獲得競争も厳しさを増しています。
フランチャイズ展開前に、「加盟者獲得をどうすすめていくか」については十分に検討しておく必要があるでしょう。
環境変化② 大量出店できる市場の減少
フランチャイズシステムは、加盟店の資本を活用することで、スピーディーに100店舗、500店舗、1,000店舗と展開することを目的に導入が進んできました。
ところが、昨今では消費者ニーズの多様化が進み、昔のように大量出店できる市場自体が減少しています。
例えば、居酒屋市場であれば、ありとあらゆるニーズに対応できる「総合居酒屋」が一世を風靡しました。しかし、昨今では、消費者ニーズが多様化し、「総合居酒屋」が低迷する一方、餃子居酒屋、串カツ居酒屋といった「専門居酒屋」が台頭してきています。
ニーズが多様化した分、過去の「総合居酒屋」のように、大量出店できる市場は少なくなっているのです。
そのため、過去のように一気に大量出店するフランチャイズのあり方は、現在の経営環境には適さないかもしれません。
環境変化③ フランチャイズ本部のイメージ悪化
フランチャイズ本部に対する社会的なイメージが悪化している点も見逃せない問題です。
情報化が進んだことにより、フランチャイズ本部と加盟者の争いを目にすることが増えました。最近注目された事案としては、「コンビニの24時間営業問題」があげられます。
なお、コンビニの24時間営業問題から学ぶべきことについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
フランチャイズ契約書で加盟店を厳しく縛るフランチャイズ本部の姿勢が世間からバッシングを受け、フランチャイズのイメージを大きく悪化させることになりました。
「フランチャイズシステム=加盟店が搾取されるシステム」などと、誤った認識を持っている人も多い印象です。
フランチャイズ本部としては、フランチャイズに対する社会的なイメージが悪化していることを前提に、加盟者から信頼を得られるよう、対策を講じていかなければなりません。
なお、これらの環境変化を踏まえたフランチャイズ展開のあり方について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
まとめ
ここまで、事業のフランチャイズ化を考えたときに知っておくべき基本的な内容を紹介してきました。
しっかりとしたフランチャイズ本部をつくるには、細かな準備が必要です。
フランチャイズ展開は加盟者との関係もあり、一度はじめてしまうと軌道修正することは容易なことではありません。
フランチャイズ本部立ち上げに取りかかる前に、その前提としてフランチャイズの仕組みを正しく理解し、入念な準備をしておきましょう。