自社商品・サービスの店舗数や提供エリアを拡大する上で、フランチャイズ展開は有効な手段です。
また商品・サービスのライフサイクルが短くなっている現代において、「早期の拡大」が重要な要素となっています。
なぜなら時間の経過とともに、商品・サービス・ビジネスモデルを真似る競合も増えてくるからです。
今回はそんな時代だからこそ、一気にマーケットを獲得する上で必要な、スピード感をもったフランチャイズ本部構築手法をご提案します。
1.経験値を上げることが消費者を育てる
自社の商品・サービスを広めるためには「経験値」を上げることが有効です。
ここでいう「経験値」とは、販売者側とお客様側の両方の側面について言えます。
販売者側の経験値:製造・サービス提供(販売手法)ノウハウの経験値
お客様側の経験値:商品やサービスを購入・体験した経験値
販売者側の経験値は、製造方法やサービス提供方法が熟練されていき、経験効果により生産性向上を実現します。
一方でお客様の経験値は、経験を増すことで新規顧客から既存顧客へ転換するとともに、お客様自ら発信(クチコミ・S N S)してくれることにより、販促効果が実現します。
フランチャイズシステムを活用する意味はここにあります。
製造方法や提供方法を可視化・形式知化・マニュアル化することによる効果と、お客様の購入経験を早期に獲得できる効果の両方を兼ね備えた仕組みであるため、フランチャイズ展開は有効なのです。
2.自社開発にこだわる機能と外部に頼る機能
そこで、フランチャイズ本部の組織としてどういった機能を自社で抱え、どこを外部のリソースを活用すべきかを考えていきます。
製造業では一定のブランドデザインが出来上がり、マーケットが拡大してくれば、一気に水平分業が進みます。
しかし経営という視点で言えば、小売・飲食・サービス業も同様です。
①自社で抱えるべき機能
必要な機能を見極めるためのポイントは2点です。
1点目は「自社の考え方・思想・アイデンティティ、コミュニケーション、人的支援に関わる機能は自社で抱える」ということです。
人の感情をコントロールしながら、良好なビジネスパートナーとしての関係構築には人間力を要し、それは自社で高めるべき組織機能であるからです。
外部に任せるより自社で実施したほうが、より高いレベルで理念や思想の浸透が図れるとも言えるでしょう。
2点目は、新商品や新サービスの開発に注力できる体制を持つということです。
事業の根幹であるため当然ではないでしょうか。
例えば、iPhoneでお馴染みのAppleも、新規IPOで話題のバルミューダも、商品の企画や開発に集中し、製造機能は外部委託するファブレス企業です。
この「企画や開発」に資金も時間も集中させるからこそ、優れた商品が次々と生み出されてくるのです。
以上2点のポイントから、次の機能は自社で抱えるべきと言えます。
加盟店開発
同じ考え方のもとでなければ、ビジネスパートナーとしては長続きしません。
本部と加盟店が互いにしっかりと時間をかけて対話をし、その中で加盟判断してもらう必要があります。
なお、加盟店募集のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
商品・サービス開発
自社事業の根幹であるため、外部に任せるわけにはいきません。
事業コンセプトと自社のノウハウによって、消費者ニーズを満たす商品やサービスを実現するには、自分達で考え抜くしかありません。
店舗運営・加盟店サポート機能
これも対話によって、成果が左右される機能です。
いつの時代も本部と加盟店間のコミュニケーションが最も重要です。
ここを他人任せにしていては、ビジネスは成り立ちません。
SV機能は自社で持つべきです。
なお、フランチャイズ本部組織におけるスーパーバイザーについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
②外部リソースを活用していい機能
ここでのポイントは「機械化できる」という点です。
将来的にはA Iに置き換わってもおかしくない分野です。
活用できるものはフルに活用することが経営効率には欠かせません。
システム・データ・顧客管理
商品・販売・顧客・生産ノウハウ等、様々なデータが蓄積されていきます。
自社にとって大事な情報でありリスクの高い機能ですが、だからこそ専門性を持った事業者に任せるべきでしょう。
自社で全てのデータ管理を担うのはもはや不可能です。
経理・財務機能
一定のルールに基づいて処理することで経営数値が積み上がっていきます。
出来上がった決算資料を持って経営判断することは重要ですが、決算書を作成すること自体が事業の根幹ではありません。
決算書作成スキルを積み上げること自体に何も意味はないと思います。
調査・マーケティング
他者と水平分業しつつ、チームマーチャンダイジングとして外部機能と結びつくことは大事な要素です。
ここで本質的に重要なのは、データの活用方法やそこから新サービスを導き出す手段です。
調査やマーケティング手法そのものを、自社で持つ価値はあまりないという意味です。
経営全般のバックアップ機能
これは前述の外注可能な機能とは異なるものです。
特定の企業の中にいると、目先の業績やトラブルに追われ、どうしても視野が狭くなりがちです。
そこで会社全体や事業を客観的に見る視点が、必要ではないでしょうか。
会社の守り、後方支援・バックオフィス機能として活用したいところです。
士業や経営ノウハウを持ったコンサルタント会社を上手く利用することをお勧めします。
ポイントは効率的に利用することです。
コスト以上のノウハウ・アドバイスを引き出すことが、経営者の手腕です。
まとめ
フランチャイズ本部組織構築において、自社で全てを賄うことはもはや不可能です。
どの分野にも専門性の持った事業者が存在するため、それは有効に活用すべきです。
自社で持つべきものと外部リソースを活用すべきものを分けて考えことが、スピード経営・不確実性の高い時代の経営には欠かせません。
今回は主に本部機能について触れてきましたが、フランチャイズシステム自体が、加盟店という外部資源を活用したビジネスモデルではあり、時代に合った事業展開といえるのではないでしょうか。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。