店舗ビジネスにおける出店立地の選定は、売上を確保する上でとても大きな要素です。
それゆえ店舗ビジネスは、立地産業とも言われてきました。
しかし立地に対する考え方も、現在大きく変わろうとしています。
今回は「これからの立地選定」について考えていきたいと思います。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
1.定説とされてきた立地タイプ
立地は、大きく分けると以下のように分けられます。
それぞれに想定する消費者の顔があり、購買動機も異なります。
そのため、提供するサービスや商品も当然に異なるものにならなければなりません。
- 住宅立地・・・・対象顧客が居住する立地
- 駅前立地・・・・通勤・通学に利用する駅近立地
- ロードサイド・・車社会における商業車、自家用車、観光車が行き交う国道・県道に面した立地商業集積地・・・ショッピングセンター・商店街などの立地
- オフィス立地・・都市部での職場環境に近接した立地
- 観光地・・・・・観光需要を見込める立地
敢えて分ければ上記のような分類になりますが、実際にはそれぞれの立地特性が混在しているケースがほとんどです。
これらはあくまで目安であり、それぞれの立地を明確に分けることはできません。
例えば出店して営業を始めてみると、想定外の顧客が存在したり、逆に想定とは違った行動洋式を顧客がとったりし、結果的に予測客数が大きく外れることが大手フランチャイズ本部でも発生します。
そのほかにも、交通量が抜群に多くても各社が撤退を繰り返すロードサイド立地も多くあるものです。
2.大手企業の動きに見る商機
電通やエイベックスなど、自社ビルを売却する動きが出てきました。
パソナも本社機能の一部を淡路島に移転しました。
電通やエイベックスがそのビルから撤退するわけではありません。
パソナも本社を東京から完全に撤退した訳ではありません。
次の戦略に向けてバランスシートを身軽にするための手段です。
大手飲食チェーンの大量閉店・撤退の動きも盛んです。
こちらは緊急事態宣言、営業自粛、時短営業の影響でしょう。
これらの流れは、賃料の減額や賃借条件の緩和など、中小企業にとっての商機にもなります。
預ける保証金の額や償却額、解約予告通知期間、原状回復費用など、賃貸人と交渉できる余地が広がっているとも言えます。
3.大きく変わった立地の概念
コロナ禍での生活(行動)様式の変化、具体的にはテレワークの普及や3密回避の風潮、配送システムの発展などの影響により、立地に対する考え方も大きく変わろうとしています。
今後も不確定要素が益々増えてきています。
そのためには常に撤退や立地変更に対応できる体制を組んでおき、容易に身動きできる準備をしておく必要があるでしょう。
旅行業界は大きな打撃を受けていますが、次の一手として、1〜2時間で行ける自宅近隣への宿泊観光や日帰り観光といった「マイクロツーリズム」に狙いをシフトさせてきています。
これまでのトレンドであった「インバウンド需要」とは全く異なる考え方です。
旅行者が変われば立地も変わり、商売の仕方も変わります。
移動販売車、キッチンカーの販売手法も非常に身軽な商売です。
トヨタのe-Palette構想やUber-eatsの動きを見ていると、固定立地が事業の足かせになる日もそう遠くないかもしれません。
4.フランチャイズ展開におけるこれからの立地選定の考え方
これからのフランチャイズ本部には、消費者の生活習慣や行動様式の変化をしっかりと捉えた出店戦略が必要となってきます。
身軽な経営をするためには、これまで当たり前であった好立地、高賃料の考え方も改める必要があります。
モバイル、遠隔、テレワーク、地方、オンラインなどをキーワードに好立地の優位性も変わってきています。
リアルとオンラインの融合が現実的な世界となり、これまでの「多くの客がレジに並ぶイメージ」とは、店舗での買い物シーンが異なってきました。
立地選定においても、集客=客が集まる(密になる)といった構造から考え直さなければならないでしょう。
これからの立地選定のポイント
- 身軽に軽快に動ける体制
- 他人資本・他社のリソースを上手く活用(利用)する交渉力
- 好立地も変化し、固定ではないと考える
こう考えるとこれまで定説とされてきた出店立地は、これからは全くあてにならないかもしれません。
例えば一等地から離れた環境や地方の一見劣勢に見える立地であっても、これまで払っていた高額賃料や保証金をテクノロジーの活用投資に振り向けることで、十分戦える好立地になる可能性を秘めているということです。
なお、ポストコロナ時代におけるフランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
まとめ
好立地に高賃料で入居するスタイルからの変化は、高賃料を払えなかった中小企業にとっては大きなチャンスです。
時短営業や営業自粛の影響で大手チェーンの撤退する裏で、個人商店(単店)の出店が増えている点も目が離せません。
大手の撤退後の賃料は下がり、各々の賃貸借条件も緩和されていると思われます。
少子高齢化の成熟化社会に突入している国内においては、街の賑わいを維持しながらも密を避ける生活洋式といった、曖昧な環境が作られようとしています。
立地の概念が変わるのも当然です。
今の時代変化は、立地の視点から見ても中小企業や個人に商機があるように見えるのです。
フランチャイズ本部として、これまでの立地戦略を見直す機会と捉えていただければと思います。