フランチャイズシステムを活用することにより、「自社のノウハウを横展開して店舗数を拡大することで売上を伸ばしたい」といった動機は、事業者としては当然持つものです。
直営店に比べて出店スピードは早まりますが、フランチャイズ展開にもデメリットがあります。
今回はそのデメリットに触れ、これからフランチャイズ本部構築を行う企業が認識しておくべきことをまとめていきます。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
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1.フランチャイズとは人材と資金を社外に頼った出店戦略である
店舗を出店する際の最も大きな要素が人材と資金です。
直営店舗による展開ではここが重荷となり、店舗数の拡大が進まないケースがあります。
一方、フランチャイズ展開は、人材と資金を他人に頼ることで店舗数拡大を進展させます。
それぞれ見ていきましょう
①人材の側面
人材には、加盟者自身や店舗で雇用するアルバイト・パートスタッフを含みます。
雇用や労務管理といった責任は加盟店にありますので、本部に直接的なコストは発生しません。
さらにオペレーション教育といった人材育成も加盟店の責任で行われます。
しかし人材育成の失敗はオペレーションの失敗を生み、売上を低下させます。
そのため失敗を最小限にするために、本部によるマニュアル化や教育研修システムの整備が重要です。
フランチャイズ本部が備えておくべきマニュアルや教育研修システムのつくり方について詳しく知りたい方は以下のコラムをご覧ください。
②資金の側面
出店費用は原則加盟店負担です。
出店形態によっては物件確保時に発生する本部コストが生じることもありますが、商材の仕入れ費用等の運転資金は加盟店が用意します。
当然ながら金融機関からの借入は、加盟者自身の信用力で行います。
2.人材と資金を加盟者に頼ることでフランチャイズ本部に生じるリスク
「人材」「資金」は出店時に検討すべき最も重要な要素です。
これを加盟者に頼ることがフランチャイズ展開のメリットとなりますが、同時に、フランチャイズ本部にとっては大きなリスクにもなります。
例えば人材育成が中途半端になればオペレーションもブランドも適切に維持されません。
そうなれば加盟店の売上が低迷して店舗閉鎖に追い込まれ、本部の信用力も落ちていくからです。
そのため、このリスクを低減させるための姿勢・体制が本部には必要となるのです。
また資金については、最終的にはフランチャイズ本部の「信用力」も重要になります。
保証人になる必要はありませんが、金融機関からお金を引き出すには本部の信用力も使わなければならない場面も出てきます。
出店に際しても本部の信用力が必要です。
例えばスーパーの店頭でゲリラ的に販売している「焼き鳥」や「餃子」、「唐揚げ」といったようなキッチンカーや店頭販売は、フランチャイズ本部という後ろ盾があるからこそ出店ができます。
個人で出店の申し入れをしても、なかなかスーパーは許可を出してくれません。
フランチャイズは加盟店の労力や時間、資金を頼りに出店する仕組みではありますが、FC本部の信用力も同時に活用することであり、他人に店舗運営を任せる以上、フランチャイズ本部の信用力を棄損するリスクとも隣り合わせであるということです。
なお、フランチャイズ本部つくりや成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
3.フランチャイズ本部にとって加盟店募集活動は大きな先行投資
フランチャイズ出店は他人資本を活用できますが、これは加盟者が存在してこその話です。
先ずは加盟候補者を募集して加盟者にする必要があります。
直営出店では必要のない加盟店募集活動がフランチャイズ展開を行うことで必要となります。
これがFC本部にとって最大の先行投資となります。
加盟店募集活動が長期化すれば費用は嵩む一方です。
一定数の加盟者が集まり、ある程度の店舗数拡大が進んではじめて本部はメリットを享受できるのです。
これは儲かる加盟店があらわれることで本部の信用力が上がり、加盟候補者も、出店できる物件も増えてくるからです。
その軌道に乗るまでは先行投資が続きます。
出店を軌道に乗せるには1店舗の加盟店の成功事例を早く作る必要があります。
成功事例がなければ後に続きません。
そういった意味では自社の社員やスタッフによる「のれん分け」からスタートするのも一つの方法です。
店舗運営ノウハウやオペレーションを理解している社員やスタッフの方が成功に導きやすいはずだからです。
そこから次のフランチャイズ展開へと拡大させていくのも手段の一つではないでしょうか。
なお、フランチャイズ加盟店募集の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
まとめ
フランチャイズ展開は軌道に乗れば、比較的短期間に自社ブランドの出店が可能です。
さらに出店に際しての人材や資金面の本部リスクも軽減できます。
しかし軌道に乗るまでの先行投資は必要であること、さらに軌道に乗った後も自社ブランドの信用力を毀損するリスクとも隣り合わせであることを、これからフランチャイズ本部を構築する企業は、あらかじめ認識しておかなければならないでしょう。