「これからフランチャイズ本部構築を考えています。加盟店向けの教育研修プログラムはどのようなものを用意しておけばよいでしょうか?」
これは先日弊社のフランチャイズ本部立ち上げセミナーにご参加いただいたエステサロン経営者からいただいた質問です。
フランチャイズの加盟者は、フランチャイズ事業についてはもちろんのこと、当該業種についても未経験であることがほとんどです。
そのため、フランチャイズ展開をスムーズに進めていくためには、当該業種の未経験者であっても、早期に一定水準の運営や管理が可能な水準まで育成できる教育研修プログラムを整備しておかなければなりません。
そこで、この記事では、フランチャイズ本部が整備すべき教育研修プログラムのつくり方やポイントについて解説をしていきたいと思います。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
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1.フランチャイズ本部の教育研修プログラムに求められること
フランチャイズ本部に求められる教育研修プログラムのつくり方の解説に入っていく前に、フランチャイズ本部の教育研修プログラムに求められることを確認しておきましょう。
それは、「“素人”でも“短期間”で“高いレベル”まで育てあげられる教育研修プログラムであること」です。
フランチャイズの加盟者は、加盟金やロイヤリティを払ってでも、本部が有するノウハウを得たいと考えてフランチャイズ加盟しています。
そのため、加盟者はフランチャイズ事業についてはもちろんのこと、当該業種についても未経験であることが前提となります。当該業種についての経験があれば、そもそもフランチャイズという選択を選ばないのです。
そのため、フランチャイズ加盟者が“素人”であっても、“高いレベル”まで育て上げることが求められるのです。
しかも、それを“短期間”で行わなければなりません。
なぜかというと、加盟者からみると、教育研修期間はお金がでていくばかりの赤字期間となるからです。
2.フランチャイズの教育研修プログラムが短期間で終わらなければならない理由
なぜ、短期間で教育研修を行わなければならないのか、具体的に考えてみましょう。
まず、加盟者はフランチャイズ本部に対して「開業前研修費」を支払わなければなりません。開業前研修費という名目ではなかったとしても、加盟金には研修の対価が含まれているはずです。
この研修にはフランチャイズ本部の人件費がかかりますから、当然、研修期間が長期化すれば、研修費も高額になっていきます。
つづいて、加盟者が負担する経費は研修費だけではありません。
研修費に加えて、研修に参加する人材の人件費を負担しなければならないのです。
これも、研修期間が長期化すればするほど膨らんでいくことになります。
研修費よりも、研修に参加される人材の人件費の方が負担は大きいかもしれません。
そして、これだけ経費負担が発生するにもかかわらず、研修期間中、加盟店には一円の売上も発生しないのです。
以上のことから、フランチャイズ本部の開業前教育研修期間が長期化すればするほど、加盟者にとっての負担は大きくなってしまうのです。
裏を返せば、開業前教育研修期間が短ければ短いほど、加盟者の負担は少なくなることになります。
これが、フランチャイズの教育研修プログラムが短期間で終わらなければならない理由です。
3.フランチャイズ展開に必要な教育研修プログラムのつくり方
それでは、本記事のテーマであるフランチャイズ展開に必要な教育研修プログラムのつくり方を確認していきましょう。
(1)教育研修プログラムの内容
教育研修プログラムの内容は、フランチャイズ展開する事業の特徴によっても変わりますが、大きく分けると次の4つに分類することができます。
①基礎
フランチャイズチェーンの理念や行動指針、ブランドコンセプト、ハウスルールなど、フランチャイズチェーンに関係する人全員が知っておくべき内容。
②運営
一日の営業の流れ、接客の流れやポイント、サービス提供方法、調理方法、オープン作業、クローズ作業など、フランチャイズ店舗の運営に関する内容。
③販促
店舗で行うべき販売促進活動の種類や内容、販売促進活動を効果的に進めるためのポイント、費用対効果の検証方法など、フランチャイズ店舗で行う販売促進活動に関する内容。
④管理
管理者の役割や求められる資質、売上・経費・利益管理、人材採用・育成・管理、クレーム対応など、フランチャイズ店舗の経営や管理に関する内容。
(2)教育研修プログラムの流れとポイント
続いて、教育研修プログラムの流れとポイントを確認していきます。
教育研修プログラムは4つのステップに分けて進めていきます。
ステップ1:知識のインプット
フランチャイズ店舗の運営を高い水準でこなすために知っておかなければならない知識をOff-JT形式で教育します。
Off-JTとは「Off The Job Training」の略称で、通常の業務から離れて行われる座学研修等をいいます。最近では、座学研修を動画で実施する本部も増えてきています。
ステップ2:インプットした知識を実体験
ステップ1で習得した知識をOJTによって実体験し、実務で活用できるレベルまで昇華させることを目指します。OJTとは「On The Job Training」の略称で、日常の業務の中で行う教育訓練をいいます。
ステップ3:これまでの集大成として研修で学んだ内容を実践
これまでの集大成として、学んできた内容を現場で実践します。
進め方は様々ありますが、例えばトレーニング店舗の「1週間店長」としてその期間の目標を設定し、PDCAサイクルを実践して目標の達成を目指すような形式とすることが理想です。
学んだ内容を実際の現場で実践することにより、これまで学んだ内容がより深く理解できるようになることはもちろん、開業後の店舗運営についての自信の醸成にもつながっていくことが期待できます。
ステップ4:合格検定で研修習得度を確認
研修の最終フェーズで、研修の習得度を確認するための検定を実施します。検定に不合格の場合には、合格するまで追加研修を実施したほうがよいでしょう。
検定に合格することを開業前研修卒業の条件とすることで、受講者の意識が高まり、最終的には店舗運営品質の安定化につながることが期待されます。
なお、ステップ3の評価で合否を採用する方法もあります。
4.フランチャイズ本部として教育研修について決めておくべきこと
最後に、フランチャイズ本部の教育研修について、最低限決めておくべきことを確認しておきましょう。
研修内容以外に最低限決めておくべき事項としては、以下の4点があげられます。
(1)研修日数・スケジュール
研修内容を標準的なスケジュールに落とし込み、研修受講者の休日も含めて、トータルの研修日数を明らかにしましょう。
なお、すでにお伝えした通り、加盟者から見れば研修の期間は赤字だけが発生する期間となりますので、研修期間は可能な限り短くしたいところです。
とはいえ、研修期間を短くしすぎて必要な知識や能力を習得することが出来なければ本末転倒です。
ですから、加盟者の負担と習得しなければならない能力・知識のバランスを踏まえ、自社にとって最適な期間を設定しましょう。
(2)対象者と参加人数
開業前に必ず受講しなければならない対象者及び参加人数を明らかにしましょう。
店舗責任者は当然に参加するとして、その他のスタッフに研修受講の必要性があるかどうかも検討しておく必要があるでしょう。一般的には、店舗責任者+1~2名に参加してもらうことが多いようです。
また、エステや整体院のようにスタッフに技術が求められるサービス業の場合には、サービス提供者全員を対象とするようなケースもあります。
この場合、開業前だけではなく、開業後に加盟者が新たに雇用したスタッフが研修を受講する際の料金等の取り扱いについても決めておく必要があります。
自社が展開する業種業態の運営品質を担保するうえで参加すべき対象者は誰か、何名程度受けておくべきか、という観点から最適な対象者及び参加人数を設定するとよいでしょう。
(3)研修費用
開業前研修に対して加盟者が負担する研修費を設定しましょう。
開業前研修の費用はもちろんのこと、開業後にも研修が発生するモデルの場合には、開業後の研修費用も決めておく必要があります。
金額はフランチャイズ本部によってまちまちですが、おおむね1日単価を1~2万円程度で設定しているフランチャイズ本部が多いようです。
また、研修期間内に必要な能力や知識を習得できない受講者がでてくるケースもあります。
この場合を想定して、追加研修の取り扱いについても決めておくとよいでしょう。
まとめ
以上、フランチャイズ本部が整備すべき教育研修プログラムのつくり方やポイントをご紹介しました。
フランチャイズ展開をスムーズに進めていくためには、当該業種の未経験者であっても、早期に一定水準の運営や管理が可能な水準まで育成できる教育研修プログラムを整備しておかなければなりません。
加盟者に成功する仕組みを提供するフランチャイズ本部としては、教育研修プログラムは加盟者に提供する商品そのものであることを心得ておかなければなりません。
これからフランチャイズシステムを活用して事業拡大を目指すのであれば、教育研修プログラムは手間とコストをかけて、しっかりと整備しておきましょう。
なお、フランチャイズ本部が加盟者に実施すべき開業サポートにについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください