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フランチャイズ本部としての理念やコンセプトを確立する

自社の商品やサービスを拡大し、店舗数を増やすための手段として、フランチャイズ展開を活用する企業が増えています。
しかし一方で、撤退する本部も一定数発生しています。

その原因の一つは、「理念やコンセプト、事業領域が曖昧なケース」です。
単に本部のビジネスモデルやノウハウを加盟店に移転(横展開)するだけでは、フランチャイズシステムは上手く機能しないのです。

なのでフランチャイズ本部が加盟店を募り拡大する前に、自社のビジネスモデルが対象とするマーケットに照らし合わせ、自社の事業領域を深く掘り下げて、自社の理念やコンセプト、事業領域を明確に再定義することが必要となります。

1.組織アイデンティティを再確認する

組織アイデンティティとは、以下のことを明確に定義するところから始まります。
・我々はどのような存在であるか
・我々は何になりたいか
・我々はどのようなビジネスを行なっているか

小売業・飲食業・各種サービス業、それぞれに社会で必要とされる業種です。
しかし、企業に求められる存在意義は、ただ物を販売するだけ、ただ食事を提供するだけではないはずです。
消費者に提供した商品・サービスの先にある満足感や世界観など、販売後に消費者に影響を与えられる可能性は、無数にあるはずです。

鉄道会社のアイデンティティは、ただ移動手段を提供するだけでなく、街づくりや小売・金融機能など様々な定義ができます。
スターバックスが、自宅でも職場でもない第三の場所=サードプレイスを提供していることは有名な話です。

ヨガスクールや整骨院、ネイルサロンが提供するサービスの先にある消費者の満足とは何か…。
塾で提供するサービスの先にある、子供達のその後の人生に与える影響とはどんなものか…。

これらを想像することで、新しい事業領域を創造できるのです。
ここを具体的に掘り下げたものが「企業ドメイン、事業ドメイン」となり、さらにその事業領域でどのような事業を行うのか、といった事業の概要が「コンセプト」です。

2.コンセプトの明確化によりお客様の支持を得る

当社のクライアントに洋菓子店を営む経営者がいらっしゃいます。
この洋菓子店のコンセプトは「ヨーロッパの駄菓子屋さんをお届けする」というものです。

ヨーロッパの世界観を忠実に再現した店舗で、イタリア仕込みの「焼き菓子」や「ケーキ」を製造・販売するお店です。
こちらの企業はコロナ禍でありながら、前年度より売上を大きく伸ばしています。

ステイホームによるご自宅用の焼き菓子需要、クリスマスや年末年始のホールケーキ需要、ネット予約からの贈答需要などを確実に取り込むことができたようです。
そしてこれらの好調な要因は「コンセプトの明確化」だと推測しています。

「焼き菓子」「ケーキ」の味が支持されていることは当然ですが、あたかもヨーロッパの街並みを歩いているような世界観を表現できているところに勝因があるようです。
海外旅行に制限がある中、お菓子を通じてヨーロッパの世界観をお届けすることで、多くのお客様の支持を得ているのです。

ちなみに当該店舗の立地は住宅地のど真ん中です。
人の往来も自動車や自転車の通行量も、決して多いとは言えない立地です。
それでもこの店のコンセプトと味に惹かれて、開業以来、お客様の数は増え続けているのです。

3.全ては普遍ではなく変わるもの

しかしながら、経営理念や経営方針が確立し、事業コンセプトや事業ドメインなどを一度決めたとしても、それらは普遍的なものではないのです。
社会は常に変わりマーケットも変わるからです。

例えば、起業時の考え方に「リーン・スタートアップ」という経営手法があります。
これは「社会やマーケットが変わることを前提として、自社の製品・サービスも初めから完璧なものを作り上げるのではなく、動きながら方向転換する」という考え方です。
そのためには「変化に対応する柔軟性」が求められます。

これからのフランチャイズ本部にも同様な姿勢が、必要ではないでしょうか。
変化に対応した結果、新たな成長のために事業ドメインが広がるかもしれません。
一方、既存事業がマーケットのニーズに合わなくなり、撤退せざるを得ないかもしれません。

さらに、こういったフランチャイズ本部の「変化の意図」を、本部は加盟店に対して丁寧に説明し、理解してもらう必要もあるでしょう。
つまり最終的には、チェーン全体で変化へ対応することが、生き残るためには必要であるということです。

なお、フランチャイズ本部つくりや成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。

フランチャイズ本部構築の極意。5つの手順と成功する3つのポイント

まとめ

フランチャイズ本部はビジネスモデルを加盟店へ販売する事業です。
製造・販売・マーケティングのノウハウを移転する事業ですが、大半が無形資産です。

もちろんマニュアルとして有形化することで知識移転することは可能です。
しかしそれを横展開することだけで、フランチャイズビジネスは成功しないのです。

加盟店に対して、「自社はどこを目指しているのか」「そのためにどのようなビジネスをしようとしているのか」「更にそれを実現するために双方が何をしなければならないのか」といった、本部の役割と加盟店の役割を明確にして、「丁寧に説明できる思想・姿勢」こそが、本部には求められているのです。

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