■コンビニに見る食品廃棄問題の解決手法
食品廃棄の問題は大きな社会問題です。
国内でも各サプライチェーン企業が食品廃棄の社会課題に取り組んでいます。
食品廃棄は、原材料メーカー、食品メーカー、食品加工ベンダー、物流企業、小売業、飲食業、家庭と、サプライチェーン全体が抱える課題です。
コンビニの取り組みにも多くの課題や背景が見えてきます。
コンビニで売れ残った食品などの廃棄が課題となる中、ファミリーマートは、消費期限が迫った商品を値引き販売する際の店側の手続きを大幅に簡略化し、値引きで減少する売り上げの一部を本部が補填(ほてん)する新たな制度を始めることを決めました。これらの取り組みで、食品の廃棄を3割程度削減することを目指しています。
コンビニは従来、加盟店のオーナーによる値引き販売に本部が慎重な姿勢を示し、売れ残った食品が大量に廃棄されることが課題となってきました。
こうした中、大手のファミリーマートは加盟店のオーナーが独自に値引きをしやすくするよう、これまでは商品ごとに手書きで伝票を記入するなど煩雑だった手続きを見直し、値引き額が印字されたシールを商品に貼り付けることで、簡単に値引きできる仕組みをことし7月をめどに始めることを決めました。
会社では、値引きで減少する売り上げの一部を本部が負担することで値引きを促す方針で、これらの取り組みで食品の廃棄を3割程度削減することを目指しています。
コンビニ大手では、ローソンが消費期限が迫った商品の値引き情報をスマートフォンで客に通知するサービスの実験を行うなど、食品の廃棄を減らすため値引きを取り入れる動きが広がっています。
出典:
2021/04/12 NHKニュース
食品廃棄削減へ 値引き販売の手続き簡素化 ファミリーマート
コンビニは「値引き販売をしない」ことが前提でしたが、食品ロス、加盟店経費や利益の獲得、本部指導による優越的地位の濫用などの課題もあり、「値引き」に関して柔軟になってきました。
今回の記事の内容には3つのポイントがあります。
①フランチャイズ契約に隠されたもの
②加盟店を救うことになるのか
③消費者意識、消費者の見る景色を変える取り組み
①フランチャイズ契約に隠されたもの
加盟店の判断での「値引き販売」奨励は前向きな取り組みです。
しかし今回の取り組みはオペレーションの煩雑さを改善しただけのものであり、これまで手書き伝票の起票が必要であったとは逆に驚きです。
次にフランチャイズ契約には、食品の発注(加盟店の納品)が多ければ多いほど、本部からのインセンティブが貰える仕組みがあります。
食品を多く発注する、仕入れる、店頭に並べることを大いに推奨する内容です。
言うなれば、食品ロスの拡大には目をつぶるということです。
やむ無く値引きせざるを得ない食品をわざわざ増やして、値引きを推奨する。
本部も加盟店も、もどかしさを感じながら取り組んでいるのではないでしょうか。
②加盟店を救うことになるのか
加盟店の損益計算上では、廃棄ロスも値引きロスも同じ経費です。利益率が下がることには変わりません。
今回は値下げ分の本部補填もあるようですが、消費者の立場からすると値引き目当ての来店動機が増えます。
結果として、必然的に発注マインドが下がり、品揃え量から売り上げが減ります。
この悪循環が定着するリスクが高いと思います。
コンビニで廃棄が出るカテゴリーは、おにぎり・お弁当類、 調理麺・惣菜類、牛乳等のチルド飲料、カウンターフーズ(揚げ物・おでん)です。
次に新商品が大量に発売されるお菓子やカップ麺です。
店頭に大量に並べることを是としている以上、加盟店負担を減らす(利益を上げる)効果は薄いと思われます。販売手法を根本から変えなければ、現状のビジネスモデルでは解決できないと言えるのではないでしょうか。
③消費者意識、消費者の見る景色を変える取り組み
最も効果的な取り組みは消費者の意識を変えることです。直近ではレジ袋の取り組みがいい例です。
レジ袋の有料化はコンビニ業界全体で猛反対していました。
消費者アンケートでも多くが否定的な意見でした。
しかし法律により強行に進めてから、一部ではスーパーやコンビニでは8割削減されたとも言われています。
コンビニ業界の売上低下の影響も叫ばれていましたが、軽微(ほぼ無い)と思われます。
コロナの影響による客数減の方が、よほどインパクトがあったぐらいです。
事前のアンケートでは消費者もコンビニ業界も猛反発、総スカンの状態であったものが、蓋を開ければレジ袋の削減があっと言う間に定着しました。
事前の意識調査など全く意味のないことだったと言えます。
やはり外圧がなければ動けないのが日本の国民性なのかもしれません。
コロナによる自粛やステイホームを余儀なくされた緊急事態宣言時も同じことを学びました。
消費者(国民)を巻き込む取り組みが最も効果的であるということです。
消費者の意識、生活習慣が変わることでレジ袋のコスト移転が発生し、コンビニの加盟店利益は上がっています。
毎月数万円のコストを削減できた効果は非常に大きかったはずです。
効果のある取り組みに期待したい
食品ロスの取り組みはやはり消費者を巻き込まなければ効果的ではありません。
「値引き販売」を推奨する取り組みはいいことではありますが、効果的ではなく効果をあげる前提の当然の仕組みであると言わざるを得ません。
食品ロスは、
- ①「CO2排出の削減」「気候変動対策」「脱炭素」につながり、消費者一人一人にインセンティブが働く取り組みであること
- ②それを国と業界団体とが一緒になって取り組み、消費者に向けたメッセージを発信し続けること
- ③そこにローソンやセブンイレブンが取り組んでいるポイント付与サービスで、消費者への直接的な分かりやすいインセンティブをアピールすること
これらの大きな取り組みが必要ではないでしょか。
結果として加盟店の廃棄ロス負担が減ることにつながります。
消費者にも加盟店にも経済的インセンティブが働き、それぞれが環境問題へ積極的に取り組んでいることを意識できるような、景色を変えるぐらいのインパクトを与えるには、国や消費者を巻き込んだ取り組みでなければ効果は上がらないでしょう。
レジ袋の削減が成功事例として見せてくれたと思います。
なお、加盟者に対する商品購入義務付けに関して詳しく知りたい方は、こちらのコラムもあわせてご覧ください。