「先日、フランチャイズの専門家に相談をしたのですが、アドバイスしていただいた内容がどうも腑に落ちなくて…
本当にそれしか方法がないのか、他の方にも聞いてみたいと思ったので相談にきました」
これは、飲食店を3店舗営む経営者からいただいたご相談です。
詳しくお話を伺ってみると、非常に魅力的なビジネスモデルであることから、「一気に加盟店を集めて、3年以内に300店舗超を目指しましょう!」と提案を受けたそうです。
ただ、その経営者的には、もともとそのような大規模な展開をするつもりはなかったことと、「今の時代にそのような急速な店舗展開を進めることには大きなリスクがあるのではないか?」と直感的に感じられたようで、弊社へのご相談に至ったとのことでした。
弊社でお話を伺った限り、確かにその経営者が展開しているビジネスモデルは他にはない優位性があり、一気に加盟店を集めようと思えば、十分にそれを実現できる条件が整っている印象でした。
しかし、経営者が感じたとおり、現代においてこのようなフランチャイズ展開の進め方には大きなリスクがあることも事実です。
そこで、今回は現代においてリスクを避けて事業拡大を目指すフランチャイズ展開のあり方について考えてみたいと思います。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
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急拡大を目指すフランチャイズ展開のあり方は成功確率が低下の一途
まず、これからフランチャイズ展開を進めていくにあたり、現代の経営環境を理解しておかなければなりません。
現代の経営環境を考える上で絶対に知っておかなければならないことは、現代は「経済が成熟化した時代」であるということです。
「経済の成熟化」とは、人々が豊かになり、生活をするうえで最低限必要なもの、例えば、住む家や家電製品などをすべて手に入れている状況をいいます。
そして、経済が成熟化してくると、消費者のニーズは多様化します。具体的に考えてみましょう。
例えば、多くの人が冷蔵庫を持っていない時代には、誰もが冷蔵庫を欲しがります。この時重視されるのは、「食材を冷やす」という冷蔵庫の本質的機能です。
冷蔵庫が無ければ食材を冷やすことができないのですから、まずは食材を冷やせる冷蔵庫が欲しいのです。その機能さえあれば、他はそれほど気にしません。
そのため、経済が成熟化していない時代には、消費者ニーズは均一的なものになります。
一方、経済が成熟化してくると、ほとんどの人はすでに冷蔵庫を保有しています。そうなると、従来のように「食材を冷やす」という冷蔵庫の本質的機能だけではなく、「自分にあった冷蔵庫が欲しい」と考えるようになります。
子供が多くいる家庭では大容量の冷蔵庫が欲しいでしょうし、単身世帯では、最小限の要領で電気代がそれほどかからない冷蔵庫が欲しいでしょう。また、食べ物を美味しい状態で保管したいと考える人は、そのような特殊機能をもつ冷蔵庫を欲しがるかもしれません。
このように、経済が成熟化すると、消費者ニーズは多様化をしていくのです。
そして、消費者ニーズが多様化していくと、必然的に1つの商品・サービスで捉えられる市場規模は小さくなってしまいます。
この、「1つの商品・サービスで捉えられる市場規模が小さくなる」という点がポイントです。
これをフランチャイズに当てはめると、
- 昔のようにまだ経済が成熟化していない時代には、消費者ニーズが均一的なものであったため、大規模展開が可能な余地が多分にあった
- しかし、現代のように経済が成熟化し、消費者ニーズが多様化した時代には、昔と比べてそれぞれの市場規模が小さくなっている分、従来のように大規模展開で成功できる可能性は低下している
ということができるのです。
そして、経済成長はいまだ続いており、同様に消費者ニーズの多様化も進んでいます。
そのため、急拡大を目指すフランチャイズ展開のあり方は、今後も成功確率が低下の一途であることは間違いないでしょう。
なお、成熟経済期におけるフランチャイズ展開のあり方について詳しく知りたい方はこちらのコラムもあわせてご覧ください。
近年の環境変化を乗り越えるためにはフランチャイズの導入が必須
一方で、他人資本を活用するフランチャイズシステムは近年の急速な環境変化を乗り越えるために必須の仕組みとなっていることも事実です。
現代は、技術革新、情報化、グローバル化の進展などにより、環境変化の速度が年々増し続けています。たとえ今好調な事業であったとしても、数年後にはどうなっているかわからない。そんな時代になっているのです。
このような時代に、店舗投資が先行し、借入金返済や固定費負担が重たい直営店で店舗展開を進めていってしまうと、環境変化への対応力は自ずと低くなってしまいます。
具体的には、借入金返済や固定費負担を削減することに限界があるため、急激な環境変化が発生して売上が減少したときに、その影響をもろに受けてしまうことになるのです。
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、このことを痛感している経営者も多いのではないでしょうか。
そして、この問題を克服するためには、他人資本を活用するフランチャイズシステムを導入するほか道はないのです。
これからのフランチャイズ展開のあり方は「小さくはじめて、段階的に大きく育てる」
それでは、これからのフランチャイズ展開のあり方はどのように考えるべきなのか。
この点、私は「小さくはじめて、段階的に大きく育てる」フランチャイズ展開のあり方がベストであると考えます。
先に説明した通り、今の時代、フランチャイズシステムを活用して急速な店舗拡大を実現できる可能性は、従来と比べて低くなってきています。
とはいえ、急速な経営環境の変化に対応していくためには、他人資本を活用するフランチャイズシステムの導入が不可欠なのです。
この2つの前提条件を踏まえると、はじめは環境変化への対応力を高めるために投資を抑制して小さくフランチャイズ展開を開始し、その状況を見て、上手くいきそうであれば段階的に投資を拡大して大きく育てていくあり方が、フランチャイズ展開のリスクを抑制でき、かつ、大規模に展開できる可能性もある最善の進め方といえるのではないでしょうか。
以上の考えから、弊社では「小さくはじめて、段階的に大きく育てるフランチャイズ展開のあり方」をスマートフランチャイズと定義し、令和時代における最善のフランチャイズ展開のあり方としてご提案しているのです。
なお、小さくはじめて、段階的に大きく育てるフランチャイズ本部構築の進め方について詳しく知りたい方はこちらのコラムも併せてご覧ください。
https://smart-fc.jp/news/fc_column/260
まとめ
以上、現代においてリスクを避けて事業拡大を目指すフランチャイズ展開のあり方をご紹介しました。
フランチャイズシステムは、他人資本を活用してスピーディーに多店舗展開を進め、市場浸透やスケールメリットの実現など目指す手法として発展してきた歴史があります。
しかし、経営環境の変化が進み、そのようなフランチャイズ展開のあり方は、今の時代に合わなくなってきています。
消費者ニーズと同様、フランチャイズ展開のあり方も多様化が進んでいるのです。
これからの時代は、従来のフランチャイズの常識に捉われず、今の時代背景と自社の目指す姿を踏まえて、自社にとって最適なフランチャイズ展開のあり方を探求していくことが何よりも大切といえるのではないでしょうか。