「高木さんからみて、理想的なフランチャイズ本部とはどのような本部ですか?」
これは、フランチャイズシステムの導入について弊社にご相談にいらっしゃった美容サロンを営む経営者からいただいた質問です。
その質問の背景には、「これからの不確実性の高い時代にフランチャイズシステムの導入が不可欠だと感じるものの、フランチャイズでトラブルが発生していることをよく耳にするため、不安…」という想いがあるようでした。
フランチャイズ加盟で成功している話よりも、フランチャイズ加盟で失敗した話の方が目につきやすいこともあり、フランチャイズ展開の必要性を感じつつも、このような不安を感じられる経営者が多いようです。
そこで、今回は加盟店とのトラブルを防止する観点から、理想的なフランチャイズ本部のあり方を考えてみたいと思います。
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(1)理想的なフランチャイズ本部は「加盟者と理念を共有できている本部」
まず結論から申し上げると、弊社では理想的なフランチャイズ本部を、フランチャイズ本部の理念やビジョン、経営方針を、加盟者と深く共有できている本部であると考えています。
フランチャイズシステムの難しい点は、本部とは独立した事業者が本部事業経営に携わる点です。
本部とは独立した事業者である以上、各事業者がそれぞれの理念やビジョン、経営方針を持っています。
しかし、チェーン店であるにもかかわらず、各事業者が自らの理念やビジョン、経営方針に基づいて事業経営をしてしまうと、各店舗の運営にばらつきが生じることは避けられません。
仮に、運営品質の低い加盟店が現れたとすれば、チェーン全体に悪影響が及ぶことになります。このような状態では、中長期的にチェーンとしての優位性を維持することはできないでしょう。
フランチャイズにおいて特に問題になりやすいのが「儲かりそうだから」という理由だけで加盟をするケースです。
この場合、加盟店が儲かっていれば問題ないかもしれませんが、仮に儲からなくなった場合、様々な問題が噴出してくることは避けようがありません。
ところが、現実的にほとんどのフランチャイズ本部が「儲かりますよ」ということを加盟者にとっての最大の魅力として訴求をしているのです。
もちろん、加盟して利益が得られなければ加盟してくれる人はいないのでしょうが、100%儲かる事業などありえませんし、加盟者の資質や努力によっても結果は大きく変わるはずです。
事業を開始するにあたり「儲かるか、儲からないか」は重要ではあるものの、それがすべてではないはずです。
・なぜその事業に取り組むのか、
・事業を通じて何を実現したいのか、
といったことが明確でなければ、そのような事業は継続することができないでしょう。
このように考えれば、儲かる・儲からない以前に、フランチャイズ本部の理念やビジョン、経営方針を、加盟者と深く共有することの方が、より重要といえるのではないでしょうか。
(2)加盟者と理念を共有するためのポイント
それでは、本部と加盟者間で理念を共有するためにはどのような点がポイントになるのでしょうか。
この点、弊社では以下の3つが特に重要なポイントと考えています。
①加盟希望者に発信する情報は「本部の理念やビジョン、経営方針」を主とする
先にもお伝えした通り、「儲かりそうだから」という理由だけで加盟をさせてしまうと、儲からなかったときにほぼ間違いなく困った事態が生じます。
例えば、本部の方針に反して「利益を出すために、顧客満足度を犠牲にしてでも原価や人件費を削減しよう」や「安売りをして顧客を集めよう」などと考える加盟店が現れる可能性があるのです。
このような事態を防止するためにも、加盟営業の段階で発信する情報は「儲かること」を主とするのではなく、「本部の理念やビジョン、経営方針」を主とする必要があるでしょう。
ただ儲かるだけではなく、本部の理念やビジョン、経営方針に共感・共鳴して加盟した方であれば、仮に儲からないが生じたときにも、利益を優先して勝手なことをするのではなく、「本部と力をあわせて苦難を乗り越えよう」と考えてくれる可能性が高まるはずです。
②「本部の理念やビジョン、経営方針」に共感・共鳴してくれる加盟者だけを絞り込む
本部としては、「本部の理念やビジョン、経営方針」に共感・共鳴している方だけを加盟させる姿勢を持つ必要があります。
この点、作業服・関連用品の専門店ワークマンの加盟基準が参考になります。
ワークマンでは、FCオーナーになるための条件として以下の5点を掲げています。
(1)個人契約のみ。専業で店舗運営すること
(2)夫婦で参加するなど必ず専業のパートナーがいること
(3)50歳未満であること
(4)健康状態が良好であること
(5)店舗から通勤30分圏内が地元であること
これを見るだけで、ワークマンが加盟者を厳しく絞り込んでいることがわかります。
「ワークマンが儲かりそうだから…」という理由だけでは、加盟できない仕組みになっているのです。
このように、本部の理念やビジョン、経営方針に共感・共鳴してくれる方に絞って加盟を認めていくことが大切でしょう。
なお、ワークマンの加盟希望者選定についてはこちらのコラムをあわせてご覧ください。
③加盟後の本部経営者と加盟店オーナーとのコミュニケーションの機会を多く確保する
本部と加盟者間で理念を共有し続けるためには、加盟前だけではなく、加盟後についても定期的・継続的に本部と加盟者間で理念やビジョン、経営方針についてコミュニケーションをとっていく必要があるでしょう。
具体的には、本部の理念やビジョン、経営方針について、最も深く理解し、情熱を持つ本部経営者から、加盟店オーナーに対して共有する機会を設けることが大切です
最近では直接集まらなくとも、インターネットを通じてコミュニケーションをとることもできます。それらを駆使しして、できるだけ高頻度で、本部経営者と加盟店オーナーとのコミュニケーションの機会を設けるべきでしょう。
まとめ
以上、今回は加盟店とのトラブルを防止する観点から、理想的なフランチャイズ本部のあり方をご紹介しました。
フランチャイズ本部に限らず、事業の本質は「理念」と「ビジネスモデル」の2点です。
これまでのフランチャイズシステムは、「ビジネスモデル」に偏った展開がなされてきた印象ですが、これがフランチャイズのイメージを悪化させる原因になっているのではないでしょうか。
特に加盟者の価値観が多様化している現代では、儲かるビジネスモデルを開発すること以上に、「本部の理念やビジョン、経営方針を加盟店と共有すること」が重要になるものと考えます。
これからフランチャイズ展開をはじめるのであれば、この点を踏まえて仕組みを設計していく必要があるでしょう。
なお、フランチャイズ本部の立ち上げ方や成功のポイントについてついて詳しく知りたいかたはこちらのコラムをご覧ください。