「これからフランチャイズ展開をはじめるにあたり、どのようなマニュアルを用意しておく必要がありますか?」
これは、先日弊社にフランチャイズ本部立ち上げについてご相談に訪れた美容サロンを営む経営者からのご相談です。
加盟店に対して「成功する仕組み」を提供するフランチャイズ本部にとって、本部がこれまで培ってきたノウハウをまとめた「マニュアル」は、まさに要ともいえるものです。
「成功する仕組み」を提供するビジネスでありながら、マニュアルが無い、またはレベルが低い状態では、不良品を販売しているのと同義でしょう。
この状態では、フランチャイズ展開が中長期的に上手くいくはずがありません。
フランチャイズ本部としては、加盟店が成功するために必要なノウハウを、漏れなく体系的にマニュアルに落とし込んでおくことが求められます。
そこで、本記事ではフランチャイズ展開に不可欠なマニュアルについて、その意義や内容について解説をしていきます。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
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1.フランチャイズ展開においてマニュアルが必要な理由
はじめに、フランチャイズ展開においてマニュアルが必要な理由を確認しておきましょう。
フランチャイズ展開においてマニュアルが必要な理由を一言で説明すると、
「目に見えないノウハウを、目に見える形にすること」
に尽きるといえます。
具体的に考えてみましょう。
フランチャイズシステムとは、「フランチャイズ本部から加盟者に対してノウハウを提供する一方、その対価として加盟者からフランチャイズ本部に対して加盟金やロイヤリティを支払う仕組み」です。
フランチャイズシステムの仕組みについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
つまり、加盟者から見れば、フランチャイズ本部が有するノウハウは、商品そのものということができます。
しかし、フランチャイズ本部が有する「ノウハウ」には、通常、形がありません。
そのため、フランチャイズシステムでは、しばしば「フランチャイズ本部から加盟者に対してノウハウが提供されたかどうか」という点でトラブルが生じています。
加盟店が思ったように利益を上げられなかったときに、「フランチャイズ本部からノウハウが提供されていないからだ!」と本部にクレームをつけてくるのです。
フランチャイズ本部としては、保有するノウハウを加盟者に提供したつもりであっても、そのノウハウに形がなければ、ノウハウが提供されたことを証明しようがありません。
そこで、フランチャイズ本部が保有しているノウハウを「マニュアル」という形に具現化し、ノウハウを形のある商品として提供する必要があるのです。
2.マニュアルを作成することによってフランチャイズ本部が得られること
フランチャイズ展開においてマニュアルが必要な理由はご理解いただけたのではないかと思います。
続いて、マニュアルを作成することによってフランチャイズ本部が得られることを確認しておきましょう。
代表的なものとしては次の4点があげられます。
①人材教育の効率化
フランチャイズ本部は、フランチャイズ事業の経験が無い加盟者を早期に一定レベルまで育てていかなければなりません。この際、マニュアルが無ければ、教育の進め方にばらつきが生じ、教育内容にも漏れや重複がでてしまいます。
その点、加盟者が学ぶべき内容を体系的にまとめたマニュアルがあれば、人材教育の効率が飛躍的に向上します。
②業務手順のブラッシュアップ
マニュアルを作成する際には、各業務のあるべき姿を検討し、チェーンのルールとして定義します。マニュアルがないときにはなんとなく行われていた各業務について、理想的なあり方を定義していくことになるため、マニュアル作成を通じて、業務手順がブラッシュアップされていくことになります。
③本部による指導の証拠
マニュアルには、フランチャイズ本部が定めたルールがまとめられています。そのため、マニュアルが加盟者に渡された時点で、本部が定めたルールが加盟者に伝えられた証拠が残ります。
フランチャイズチェーンでは、加盟店が問題を起こしたときに、フランチャイズ本部まで責任を問われることがあります。例えば、加盟店で従業員の長時間労働問題が発生したときに、本部が責任を問われたケースもあります。
このようなときにも、マニュアルの中に「守るべき労務管理のルール」が定められていたとしたら、本部が加盟店に対して指導を行っていることが客観的な証拠として残ります。
結果、マニュアルが本部を守ることにもつながるのです。
④加盟金返還リスクの抑制
フランチャイズ本部と加盟者間のトラブルでよくあるのが「加盟金を返還しろ!」というものです。加盟者が「フランチャイズ本部からノウハウの提供を受けていない」等と主張して加盟金の返還を求めるケースが多いようです。
このようなときに、マニュアルがなければ「本部がノウハウを提供したこと」を立証するのは困難です。一方、フランチャイズ本部から加盟者に対してマニュアルが渡されているのであれば、少なくとも何らかのノウハウが提供されていることが証拠として残ります。
そのため、加盟者から加盟金返還の請求を受けたときにも、フランチャイズ本部は自信をもって、その請求を拒否することができるのです。
3.フランチャイズ展開に必要なマニュアルの種類と内容
ここまで、フランチャイズシステムにおけるマニュアルの役割や作成の意義を確認してきました。
それでは、フランチャイズ本部はどのようなマニュアルを用意すべきなのか、その種類と内容を確認していきましょう。
①加盟店向けのマニュアル
加盟店向けで必要なマニュアルとしては次の内容があげれます。
理念・コンセプトマニュアル
フランチャイズチェーンに関係する人全員が知っておくべき内容をまとめたマニュアルです。具体的な内容としては、フランチャイズチェーンの理念や行動指針、ブランドコンセプト、ハウスルールなどをまとめます。
オペレーションマニュアル
店舗運営に関係する人が知っておくべき内容をまとめたマニュアルです。具体的な内容としては、一日の営業の流れ、接客の流れやポイント、サービス提供方法、調理方法、オープン作業、クローズ作業などをまとめます
マネジメントマニュアル
加盟店の経営者やマネージャー、店長などの店舗管理者が知っておくべき内容をまとめたマニュアルです。
具体的な内容としては、管理者の役割や求められる資質、売上・経費・利益管理、販促活動、人材採用・育成・管理、クレーム対応などをまとめます。
②フランチャイズ本部向けのマニュアル
フランチャイズ本部向けで必要なマニュアルとしては次の内容があげれます。
オープンマニュアル
加盟店のオープン作業をサポートするスタッフが知っておくべき内容をまとめたマニュアルです。
具体的な内容としては、オープン手続きの流れやポイント、スケジュール等をまとめます。
スーパーバイザーマニュアル
加盟店の経営サポートを担当するスタッフ(スーパーバイザー)が知っておくべき内容をまとめたマニュアルです。
具体的な内容としては、フランチャイズの基礎知識、スーパーバイザーの役割、スーパーバイジング活動の進め方、加盟店からの質問に対するQ&A等をまとめます。
なお、SVの果たすべき役割やSVに求められる資質について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
加盟店開発マニュアル
加盟店開発業務を担当するスタッフが知っておくべき内容をまとめたマニュアルです。
具体的な内容としては、フランチャイズの基礎知識、加盟店開発の進め方とポイント、加盟店からの質問に対するQ&A等をまとめます。
なお、フランチャイズ加盟店募集の基本的な流れやポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
まとめ
以上、フランチャイズ展開に不可欠なマニュアルについて、その意義や内容をご紹介しました。
フランチャイズ展開の成功のためには、加盟店が成功するために必要なノウハウを、漏れなく体系的に落とし込んだマニュアルが不可欠です。
マニュアルをつくることは決して簡単なことではありませんが、しっかりとしたマニュアルを整備することで、その苦労は何倍の効果にもなってフランチャイズ本部に返ってきます。
フランチャイズ展開での成功を目指すのであれば、できるだけ早いタイミングでマニュアルの作成に着手するべきでしょう。
なお、マニュアルの作成の方法や作成時の留意点について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。