フランチャイズ契約は契約期間が定められていますが、対話により円満に契約を終了するケースもあれば、互いに主張を相意入れないケース、甲(本部)乙(加盟者)のどちらかが契約違反を犯すことで契約解除になるケースもあります。
今回は契約期間の満了でなくとも円満に終了を迎えられる「合意解約」と、契約違反から契約終了を迎える「契約解除」について触れていきます。
なお、フランチャイズ本部つくりや成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
フランチャイズ契約終了の種類
フランチャイズ契約終了の種類は概ね5つに分けられます。
「満了終了」「中途解約」「合意解約」「契約解除」「当然終了」です。
今回は「合意解約」「契約解除」「当然終了」について解説します。
合意解約
これは読んで字の如く、互いの合意があって、表面上合意に至ったケースです。
ここで“表面上”と敢えて記しているのには理由があります。
本当に円満に契約を終了するのであれば、原則として契約満了期間をもって終了させることが適切です。
フランチャイズ契約書に記された内容にそって粛々と約束通り終了するためです。
しかし「合意解約」の中には、致し方ない事情により甲(本部)乙(加盟者)のどちらかが相手の立場を鑑み契約の終了に合意するケースです。
因みに、「合意解約」は契約期間中の終了であっても“違約金”や“解約金”は原則発生しません。
互いに納得の上で合意するためです。
“違約金”や“解約金”が発生するケースは「中途解約」を差します。
合意解約のケース
・加盟者側の契約者である乙の代表や社長、店長等が疾病や傷害により、就業不能の状態であり、一定期間回復の見込みがなく、更に引き継ぐ者が存在しない場合。
・本部の想定(シミュレーション)する売上・収益と現実とが著しく乖離している場合。
これは本部が必ず認めなければならない訳ではないですが、売上・加盟店利益の最低限をフランチャイズ契約書上で設けているケースもあります。
契約解除
契約解除は大きく分けて「無催告解除」と「催告解除」があります。
“無催告”とは事前に書面などの通知なしに解除に踏み切る行為です。
「催告解除」の場合は契約違反が判明しても、一定期間に是正するよう相手に促します。
その定めた期間を過ぎても是正されない場合に「契約解除」に踏み切ります。
契約解除は双方のどちらかが契約違反を犯した場合に取られる措置です。
甲(本部)が犯す場合も乙(加盟者)が犯す場合のどちらもあります。
本部側の解除(加盟者側の契約違反)のケース
・売上送金等の遅延や使い込み
・加盟時・加盟中に必要な本部への提出書類の虚偽記載
・秘匿情報や個人情報等の故意の流出
・ブランド、商号等の転用
・営業に必要な設備等の転売
・営業放棄
・不渡りなどの支払不能状態
・破産、清算等の手続き
・脱税、税金滞納等の処分
加盟者側の解除(本部側の契約違反)のケース
・加盟店情報の漏洩
・提供するフランチャイズ・システムの重大な欠陥
・加盟者利益等の未払い
・会社の解散、清算、倒産等の手続き
・脱税、税金滞納等の処分
上記に挙げられる事象は極めて悪質な行為であるため、原則無催告で解除するケースと言えます。
当然終了
こちらは特に外的要因により、物理的に営業が不能な場合に、双方の意思に関係なく契約を終了させる条項です。
当然終了のケース
・物件の所有や賃借などの権利を喪失したとき。
甲(本部)乙(加盟店)のどちらにも言えます。
物理的に物件を失うと営業はできず、定期借家契約や公用収容の場合が該当します。
・大規模災害や戦争等の天変地異、火災による店舗が消失した場合。
・契約者(法人の場合その代表)が死亡した場合
契約者自身がフランチャイズ契約に基づいた意思表示ができない状態であるため、上記の場合は当然終了になります。
まとめ
フランチャイズ契約に基づく裁判は数多発生していますが、労力や時間を考えると裁判で決着させることは決して楽ではありません。
従って話し合いの中で「合意解約」に持ち込んだ方が、メリットが大きい場合も多いのが実情です。
仮に多額の違約金や解約金を請求できたとしても、相手に支払い能力がなければそれも獲得できないからです。
フランチャイズ本部を立ち上げる時に、契約終了時の様々なケースを想定することは、なかなか難しいことかもしれません。
しかし上記に挙げた事例は、過去フランチャイズ契約において発生した行為ですので、これらを参考に自社でも発生しうるケースを想定し、フランチャイズ契約書に盛り込んでおくことが必要ではないでしょうか。