「ここ最近は3年先どころか1年先さえどうなるか予想がつきませんね…。今後生き残っていくためにも、経営のあり方を抜本的に見直したいと考えています」
これは、先日弊社に今後の経営のあり方について相談に訪れた美容院チェーンを営む経営者の言葉です。
情報化や国際化、技術革新等の影響により、環境変化の速度は年々増し続けています。
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、このことを実感している経営者も多いのではないでしょうか。
新型コロナ問題は、ワクチン接種の浸透もあって沈静化しそうな雰囲気が出てきましたが、不確実性が増す現代では、今後も急激な環境変化が発生することは避けられません。
現代の企業は、今後、急激な環境変化が発生することを前提に、「高い環境適応力」を身につける必要があるでしょう。
そこで、本記事では企業が「高い環境適応力」を身につけるための経営のあり方について解説をしていきたいと思います。
コンテンツ
1.現代の店舗ビジネス企業には「高い環境適応力」=「身軽経営」が求められている
現代の経営環境は「VUCA(ブーカ)」化しているといわれています。
VUCAとは、
- Volatility(変動性)
- Uncertainty(不確実性)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性)
という現代の経営環境の特徴を示す4つの単語の頭文字を取った造語で、「将来の予測が困難」ということを意味します。
振り返ってみれば、ここ数年、歴史的な出来事が毎年のように発生しています。
新型コロナ問題はその代表的なものでしょうが、それ以外にも、自然災害、金融危機、テロ、国際紛争など、毎年のように歴史的な出来事が発生し、その都度、企業を取り巻く環境も大きく変化しています。
企業が存続・発展していくためには、この環境変化に対して迅速かつ柔軟に適応していかなければなりません。
これを店舗ビジネスの視点で考えると、環境変化に伴う売上急減にも対応できるよう、
・人件費や家賃等の固定費を圧縮すること
・初期投資を抑制して、借入金返済負担の圧縮・財務基盤を強化すること
等により、身軽経営を実現することが求められているものといえます。
2.直営店による展開では「身軽経営」を実現することはできない
しかし、ここで1つ問題が生じます。
店舗ビジネスでは、ビジネスモデルの性質上、「身軽経営」を実現することが極めて難しいのです。
具体的に考えてみましょう。
まず、店舗ビジネスでは、家賃を無くすことはできませんし、人件費を圧縮するといっても、店舗規模によって最低限必要な人員数というものがあります。
そのため、固定費を圧縮するといっても限界があります。
また、店舗ビジネスでは、店舗開業時にまとまった投資をして、それを複数年かけて回収していく性質があります。
そのため、投資回収が終わらないうちに店舗展開を進めようとすると、借入金が増え、財務体質が悪化していくことは避けられません。
とはいえ、投資回収に店舗展開速度をあわせていては、店舗展開スピードが遅くなってしまいます。これでは、環境変化が急速に進む現代においては、事業機会を逸することにもつながりかねません。
このように、店舗ビジネスでは、ビジネスモデルの性質上、「身軽経営」を実現することが極めて難しい問題となるのです。
3.店舗ビジネスが「身軽経営」を実現するにはフランチャイズシステムの活用が不可欠
それでは、店舗ビジネスが「身軽経営」を実現するにはどうしたらいいのでしょうか。
その有力な選択肢が、他人資本を活用するフランチャイズシステムを導入することです。
フランチャイズシステムは、加盟店の資本を活用して店舗展開を進めていく手法です。
店舗開店時に必要な初期投資資金を加盟店に負担してもらうため、直営店による展開のように、店舗展開と比例して借入金が増え、財務体質が悪化するようなことはありません。
また、加盟店が経営する店舗の家賃や人件費等の固定費負担も加盟店が負担します。その分、本部は固定費を圧縮することができるため、仮に急激な環境変化が生じた場合にも、直営店による展開時と比べれば、環境変化に柔軟に対応することができるようになります。
このように、フランチャイズシステムを活用することで、店舗ビジネスにおいても、環境変化に強い「身軽経営」を実現することができるのです。
経営環境のVUCA化が進む現代の経営環境を考えれば、フランチャイズシステムを活用して「身軽経営」を実現することは、店舗ビジネスを営む企業が持続・発展していくために不可欠なことといえるのではないでしょうか。
なお、フランチャイズ展開の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムも併せてご覧ください。
4.「身軽経営」を実現するためのフランチャイズシステムのあり方とは
「フランチャイズシステム」と聞くと、大変そうなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ここでいうフランチャイズシステムは、100店舗、1,000店舗超の大規模展開を目指すものとは異なるため、それほど複雑なものではありません。
そもそも、フランチャイズシステムは、加盟店の資本を活用することで本部の資金面での制約を取り除き、スピーディーに100店舗、1,000店舗超の大規模展開を実現する手法として発展してきた歴史があります。
この場合、それだけの展開に耐えうる仕組みの構築が求められることになるため、当然、フランチャイズ展開に伴い取り組まなければならないことが多々発生します。
一例としては、情報システム、物流システム、加盟店営業機能、物件開発機能などがあげられます。
一方、「身軽経営」を実現するためのフランチャイズシステムは、従来のフランチャイズシステムのように、大規模展開することを前提としません。
そのため、従来のフランチャイズほど万全な体制を整える必要はなく、直営展開の延長として導入可能です。
むしろ、大規模な店舗展開を前提としていない以上、費用対効果の側面から考えても、フランチャイズシステム導入に費やす時間や費用を最小限に抑制しなければならないのです。
最小規模ではじめて、段階的に大きく育てる。
これが、「身軽経営」を実現するためのフランチャイズシステムのあり方といえるでしょう。
なお、小さくはじめて、大きく育てるフランチャイズ本部構築の進め方について詳しく知りたい方はこちらのコラムも併せてご覧ください。
まとめ
以上、企業が環境適応力を高めるためのフランチャイズ展開のあり方をご紹介しました。
不確実性が増す現代では、今後も急激な環境変化が継続的に発生することは避けられません。
これからの時代に企業が存続・発展していくためには、急激な環境変化が発生することを前提に、「高い環境適応力」を身につけなければならないでしょう。
そして、店舗ビジネスを営む企業が「高い環境適応力」を身につける有力な選択肢が、他人資本を活用するフランチャイズシステムを“小規模”に導入することなのです。
これからの時代に勝ち残れる「高い環境適応力」を身につけるために、フランチャイズシステムの活用を検討してみてはいかがでしょうか。