「先行き不透明な時代になり、直営店だけでの展開には限界を感じています。
なので、これからフランチャイズ展開にチャレンジしていきたいと考えています。」
これは、先日フランチャイズ本部構築の相談で弊社に訪れたフィットネスジムチェーンを営む経営者の言葉です。
経営環境の不確実性が増す中、これからフランチャイズ本部構築に動き出す企業が増加しているようです。
弊社へのご相談も、昨年と比べて倍程度にまで増えています。
一方、相談に来られた経営者とお話をしていると、フランチャイズ展開の落とし穴ともいうべきものにはまってしまいそうな考えをお持ちの方が多くいらっしゃることに気が付きます。
そこで、今回はフランチャイズ本部構築に取りかかる経営者がはまりがちな落とし穴をご紹介したいと思います。
落とし穴1:加盟金やロイヤリティを安くしすぎる
一つ目の落とし穴は、「加盟金やロイヤリティを安くしすぎる」というものです。
この背景には、「加盟金やロイヤリティが安ければ、フランチャイズ加盟のハードルが下がり、加盟者が集まりやすいだろう」という考えがあるようです。
たしかに、競合するフランチャイズ本部と比較して加盟金やロイヤリティが安ければ、加盟希望者を集めやすいかもしれません。
しかし、加盟金やロイヤリティを安くすると、本部の収益性は当然に低下します。
加盟店にとって一見いいことのようにも感じられますが、本部の収益性が低下するということは、本部の投資余力が失われていくということでもあります。
フランチャイズ本部の重要な仕事は、ビジネスモデルを磨き込み、チェーン全体が儲かる状態を維持していくことです。
このためには相応の投資が必要となりますが、本部の収益性が低いと、このような投資を行うことができなくなってしまうのです。
その結果、チェーン全体の競争力が低下し、加盟金やロイヤリティが安くても加盟店が儲からない、という悪循環に陥る可能性があるのです。
フランチャイズ本部としては、フランチャイズシステムにおける加盟金やロイヤリティの役割を正しく認識し、チェーンの継続的な繁栄に不可欠な投資原資を確保できる水準で加盟金やロイヤリティを設定しなければならないのです。
落とし穴2:フランチャイズ契約書で加盟店を統制しようとする
二つ目の落とし穴は、「はじめからフランチャイズ契約書で加盟店を統制しようとする」というものです。
フランチャイズ展開を考える上で、本部にとって心配なことが「加盟店が勝手なことをはじめないか」というものでしょう。
フランチャイズチェーンには、様々な考えを持つ企業が集まるわけですから、当然、このようなリスクはあります。
そのため、多くの本部経営者が、フランチャイズ契約書に厳しい制約を盛り込んで、加盟店を統制しようと考えます。
もちろん、フランチャイズ契約書に加盟店に守ってほしいことを漏れなく盛り込んでおくこと自体は問題ありません。
しかし、はじめから加盟店の行動をフランチャイズ契約書で統制しようとする行為は、これだけ情報化が進んだ現代においては、本部にとってもリスクの高い選択肢となっています。
それを象徴する例が、コンビニの24時間営業問題でしょう。
契約上は正しいことを主張している本部が、社会的に大きな批判を浴びることになったのです。
なおコンビニの24時間営業問題について詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
情報化が進み、一加盟店が情報発信力を持つようになった今、本部に有利な契約書を用いて加盟店を統制しようとするフランチャイズ本部の姿勢は、社会から厳しい批判を受けることにもつながりかねないのです。
今の時代背景を考えれば、フランチャイズ本部は契約書に頼りすぎることなく、本部と加盟店の信頼関係をベースに加盟店を統制する力を身につけていかなければならないのです。
落とし穴3:いつのまにかフランチャイズ加盟させることがゴールになる
三つ目の落とし穴は、「いつのまにかフランチャイズ加盟させることがゴールになる」というものです。
フランチャイズ展開を進めていくためには、その前提として加盟者を見つける必要があります。しかし、加盟店の実績が少ない初期段階において、加盟者を見つけることは簡単なことではありません。
ここでよくある問題が、
- 目の前に現れた加盟検討者を説得して加盟させようとする
- 加盟希望者全員を加盟させる
といったものです。
加盟者が集まっていないときに、目の前に加盟希望者があらわれれば、何とかして加盟まで持っていきたいと考えるのは当たり前です。
しかし、ここでフランチャイズ本部が認識しなければならないことは、
- フランチャイズは、加盟してからがスタートであること、
- そして、一度契約してしまうと後戻りはできないこと、
でしょう。
例えば、フランチャイズ本部の理念を共有できない人を加盟させてしまったとしたら、加盟後に困った事態が生じる可能性は高いでしょう。
また、フランチャイズ本部が、加盟検討者を説得して加盟させるようなことをしていたとしたら、仮に加盟後に事業が上手くいかなかったときに、本部と加盟者の間にトラブルが生じることは避けようがありません。
フランチャイズは、加盟させることがゴールではなく、加盟させた後に、加盟者に成功してもらい、フランチャイズ本部と加盟者がWIN-WINの関係になることがゴールです。
ですから、フランチャイズ本部には、目先の誘惑に負けず、本部とWIN-WINの関係をつくれる加盟希望者に限って加盟を認めていく姿勢が求められるのです。
まとめ
以上、今回はフランチャイズ本部構築に取りかかる経営者がはまりがちな落とし穴をご紹介しました。
不確実性が高まる現代において、フランチャイズシステムの導入は、店舗ビジネスが発展していくための有効な選択肢です。
一方で、フランチャイズシステムは、取り扱い方を間違えれば、フランチャイズ本部、加盟者双方が不幸な結果になることもあります。
フランチャイズシステムを上手に活用し、フランチャイズ本部と加盟店、双方の幸せを実現していくためにも、今回紹介した3つのポイントを押させて、フランチャイズ本部構築を進めていくことが大切です。
なお、フランチャイズ本部の立ち上げ方や成功のポイントについてついて詳しく知りたいかたはこちらのコラムをご覧ください。