近年、フランチャイズシステムの活用される事業領域が広がりをみせています。
春野コーポレーションは自らが経営する養豚業のフランチャイズ展開を開始することを発表しました。
養豚業の春野コーポレーション(浜松市)が事業を拡大している。種豚や肉豚の生産から食肉販売店の運営まで手掛ける強みを生かし、養豚業のフランチャイズチェーン(FC)化にも乗り出す。実店舗やオンライン、移動型の食肉販売も通じてブランド認知度を上げ、東海エリアを中心にシェアを広げる。
2021年以降にFC展開を始める。契約した養豚業者に春野コーポレーションの豚を提供し、食肉の生産を委託する。豚の飼育ノウハウを提供するほか、飼育舎の建設なども支援する。生産した豚肉は買い取り、同社が静岡県などに5店舗を構える食肉販売店「康一」などで販売する。
出典
2021/04/26 日経MJ(流通新聞) 12ページ
浜松の養豚、FCで拡大
これまでのフランチャイズ展開というと、主に飲食業・サービス業・小売業などのいわゆる「第3次産業」で取り入れられてきました。
一方、春野コーポレーションでは、フランチャイズシステムを養豚業、すなわち「第1次産業」に取り入れる考えです。
具体的には、フランチャイズ本部から加盟店に対して養豚業経営のノウハウや種豚を提供して養豚業を経営してもらい、生産した豚肉をフランチャイズ本部が買い取って、直営店舗で販売する仕組みとなっています。
これまでの考え方であれば、フランチャイズ本部が商品を製造し、その商品を販売する店舗をフランチャイズ化するケースが大半でした。春野コーポレーションのフランチャイズシステムは、一般的なフランチャイズシステムと逆の構造になっている点が特徴的といえます。
この仕組みの違いは、フランチャイズ展開の目的の違いから生じているものと考えられます。
具体的には、従来のフランチャイズシステムが、「スピーディーな多店舗展開」を目的としていることに対して、春野コーポレーションのフランチャイズシステムは「環境変化に強い経営基盤の構築」を目的としているものと考えられます。
養豚業は、過去に「豚熱の流行」など流行で危機的状況に陥ったことがあるようです。
危機的事態発生時に養豚場がすべて直営だとすると、その影響は計り知れません。
そこで、一部の養豚場をフランチャイズ化し、危機的事態発生時にもその影響をフランチャイズ本部と加盟店で分散して負担をすることで、会社が受ける影響を抑制しようとしているのです。
これが、展開余地の大きい「販売店」よりも、展開余地の限られる「養豚場」をフランチャイズ化の対象としている理由だと考えられます。
近年、新たにフランチャイズ化をはじめる企業の動向を見ていると、フランチャイズシステムの活用のあり方が大きく変化していることを実感します。
「経営力を強化するためにフランチャイズシステムを活用する」
これが、新しいフランチャイズ展開のあり方の一つになっていくのではないでしょうか。
なお、自社の展開する事業がフランチャイズ展開可能かどうかをお知りになりたい場合は、以下コラムにて「フランチャイズ展開の条件」を確認いただければと思います。