「当社が運営している業態はフランチャイズ展開できるでしょうか」
これは、先日弊社にフランチャイズ展開のご相談に訪れた宅配専門飲食店を営む経営者からいただいたご質問です。
フランチャイズ展開を目指す経営者の中には、フランチャイズ展開することをとても難しいことのように考えられている方がいらっしゃいます。
実際、フランチャイズ展開を進めようとすると、専門的な知識が求められる場面も出てくるのですが、フランチャイズ展開できるかどうかだけ考えてみると、実はそれほど難しいものはありません。
そこで、今回はフランチャイズ本部が備えておくべき条件をご紹介したいと思います。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
条件1:収益性が高いこと
これは当たり前のことですが、フランチャイズ展開する業態は、高い収益性を実現していることが前提となります。
加盟者が自力で事業展開するよりも儲からないのであれば、フランチャイズ本部の存在価値がありません。
ビジネスモデルやフランチャイズシステムの特徴にもよりますが、フランチャイズ加盟で生じるコスト(加盟金やロイヤリティ等)も含めて、加盟店の初期投資を3年程度で回収できる程度の収益性は確保したいところです。
直営店舗の営業利益率で考えると、飲食店でいえば15%以上、サービス業でいえば20%以上が必要になるでしょう。
もちろん、上記が必須条件というわけではありませんが、他のフランチャイズチェーンと比較して収益性が劣るのであれば、当然、加盟店開発の難易度が高くなります。
そのため、収益性が他のフランチャイズチェーンより劣る場合には、加盟金やロイヤリティを引き下げなければならない可能性もあるでしょう。
条件2:明確な差別化要素を有し、容易に模倣できないこと
フランチャイズ展開がうまく進み、店舗が増えてくると、当然、第三者が真似をして、類似業態が登場してきます。
類似店舗が増加して競争環境が激化すれば、チェーンの競争力が失われることも考えられます。
過去には、「居抜き物件の活用+サラダなどの食べ放題」というモデルで一世を風靡したレストランチェーンが、あっという間に戦略を同業他社に模倣されてしまい、結果として短期間で優位性が失われ、大量閉店に追い込まれてしまった例があります。
これは、差別化要素である「居抜き物件の活用+サラダなどの食べ放題」が、容易に模倣できてしまったことに一因があります。
真似をされること自体は避けようがありません。
フランチャイズ展開がうまく行けばうまく行くほど、真似をする者も増えてくるものです。
ここで大切となるのが容易には模倣できない差別化要素を有していることです。
例えば、
- 自社でしか取り扱えない商品や原材料がある
- 人材教育方法に独自のノウハウがある
- 自社で開発した情報システムが差別化の源泉である
などがあげられます。
これからフランチャイズ展開をしようと考えるのであれば、差別化要素が容易に模倣されないよう、対策を講じる必要があるかもしれません。
条件3:素人でも短期間で運営が可能になること
フランチャイズチェーンにとって、チェーン店間の統一性はブランドイメージを保つためにとても重要な要素となります。
統一性とは、どの店舗を利用しても、一定水準のサービス品質が保たれている、ということです。
店舗間でサービス品質にばらつきがある場合、顧客から見ると、そのチェーンを安心して利用することができなくなってしまいます。
統一性を考えた時にしばしば問題となるのが、業態の運営難易度の高低です。
運営難易度が低い=素人でも運営できる難易度であれば、統一性を保つことは比較的容易に出来ますが、運営難易度が高い=例えば職人の技術が必要などの場合、チェーンとしての統一性を保つことはとても難しいことになります。
ですから、第三者加盟を前提としたフランチャイズ展開をスムーズに進めていく為には、運営難易度がそれほど高くないことが望ましいです。
とはいえ、運営難易度が高いからといって、フランチャイズ展開ができないというわけではありません。
むしろ、運営難易度が高いことは、競合他社に対する差別化要素となるメリットもあります。
この場合には、相応の教育システムや業務マニュアルを整備して、教育期間をできる限り短期化できるように努力することが大切です。
これを実現できれば、他のフランチャイズチェーンに対する大きな優位性となるでしょう。
なお、フランチャイズ展開に必要なマニュアルのつくり方について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
条件4:成功に再現性があること
成功の再現性とは、本部が定めているモデル店舗基準に基づいて店舗を開店・運営した場合に、モデル店舗と同水準の成功を収めることができる、という考えです。
成功に再現性があるとは、モデル店舗の成功がまぐれではないこと、と言い換えることもできます。
成功の仕組みを加盟店に提供するフランチャイズ本部にとって、まさに核となる要素といえます。
例えば、地域性の強い業態を、既存の展開エリアとは全く別のエリアに出店した場合、モデル店舗と同様の結果が生まれるかどうか、やってみなければわかりません。
当たり前のことですが、はじめてチャレンジすることはリスクが高く、失敗する可能性もおおいにあります。
この状態では、成功に再現性があるとはとても言いきれません。
このような場合には、フランチャイズ本部がトライアルで当該エリアに1、2店舗程度出店し、モデル店舗と同水準の成績をおさめられることを確認する、すなわち成功の再現性があるかどうかを検証する必要があるでしょう。
成功の仕組みを商売のタネとするのですから、成功の再現性を検証することは本部の義務といえます。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
まとめ
以上、フランチャイズ本部が備えるべき条件をご紹介しました。
フランチャイズ展開するための条件を満たすこと自体は決して難しいものではありません。
一方、環境変化が急速に進む現代において、多数の経営者の力を集結させるフランチャイズシステムは、店舗拡大に極めて有効なツールです。
この有効なツールを、ぜひ企業の発展に役立てていただきたいと思います。