「フランチャイズ展開を成功させるために最も重要なポイントは何ですか?」
この質問は、弊社が定期的に開催してるフランチャイズ本部構築セミナーや個別相談に訪れる経営者から頻繁にいただく質問です。
これからフランチャイズ展開を目指すのであれば、成功のためのポイントはぜひとも知っておきたいところでしょう。
もちろん、フランチャイズ展開成功のポイントは、一言にまとめられるようなものではありません。
ですが、あえて一言にまとめるとするならば「フランチャイズ加盟希望者を厳正に見極めること」、すなわち「加盟店審査」になるのではないかと思います。
そこで本コラムでは、フランチャイズ展開の成否を左右する加盟店審査の重要性や考え方について解説していきます。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
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フランチャイズ展開において加盟店審査が大切な理由
まずフランチャイズ展開成功のポイントが「加盟店審査」である理由について考えてみたいと思います。
フランチャイズ展開で大切なことは、加盟店が投資に見合う利益を得られることなのは疑う余地がありません。
そこで、フランチャイズ本部としては、
- しっかりと利益を出せるビジネスモデルを確立する
- 素人でも高いレベルで運営できるオペレーションシステムを確立する
- 加盟店の経営、運営状況にあわせて適切なサポートを行う
などといったことが求められます。
これらはフランチャイズ本部にとって、どれも非常に大切なことです。
しかし、ここで理解しておかなければならないことは、
100%の確率で、中長期的に利益が出せるビジネスなど存在しない
という事実です。
そのため、加盟店が利益を出せるようフランチャイズ本部が懸命に努力をしたとしても、必ず加盟店の中に不採算店は現れてきます。
新型コロナのように急激な経営環境の変化が生じれば、多くの店舗が赤字に転落するようなこともあるでしょう。
このとき、フランチャイズ展開の成否を左右するのが、フランチャイズ本部と加盟者がお互いを信頼し、力を合わせて苦難に立ち向かえるかどうかです。
仮に、加盟者がフランチャイズ本部に対してただ改善策を求めるような状況であったとしたら、苦難を乗り切ることはできないでしょう。
ですから、フランチャイズ展開を成功させるためには、フランチャイズ本部が心の底から信頼でき、一致団結して事業運営できる加盟者に限って加盟を認めていくことが不可欠となるのです。
成功する加盟店を選定する3つの着眼点
フランチャイズ展開の成功のために「加盟者選定」が大切である理由がお分りいただけたのではないかと思います。
つづいて、加盟者を選定する際の3つの着眼点を確認しておきましょう。
①フランチャイズ本部の経営理念や経営方針に対する共感度
加盟者が、フランチャイズ本部の経営理念や経営方針に共感していれば、たとえ加盟後に何らかの問題が生じようとも、本部と加盟者間の信頼関係をベースに、力を合わせて乗り越えていくことができるはずです。
逆に、経営理念や経営方針への共感度が低ければ、フランチャイズ本部と加盟者の関係性は、儲かるか、儲からないかだけのとなってしまいます。
これでは、加盟者が儲かっていれば問題ないかもしれませんが、儲からなくなった場合にほぼ確実にトラブルが生じます。
ですから、加盟者がフランチャイズ本部の経営理念や経営方針に共感していることは、フランチャイズシステムの前提条件となるのです。
②経営者としての姿勢
加盟者はフランチャイズ本部に雇用される、または子会社になるのではなく、あくまでフランチャイズ本部と対等な独立事業者です。
フランチャイズシステムでは、本部は加盟者をサポートはしますが、加盟者の収益を保証するわけではありません。
ですから、フランチャイズに加盟するとはいえ、加盟者自身の力で経営を成功させる覚悟をもっていただく必要があります。
この点は、個人や小規模企業を加盟ターゲットとする場合に、重点的にチェックする必要があるでしょう。
③フランチャイズシステムについての理解度
フランチャイズに加盟する以上、フランチャイズシステムについて最低限の知識を有していることは前提条件です。
そのうえで、自社のフランチャイズシステムについてもしっかりと理解してもらう必要があります。
特に、加盟者の役割や義務を確認することは重要です。
フランチャイズシステムは、本部と加盟者それぞれが、各自の役割や義務を果たすことで成り立ちます。
フランチャイズ本部としては、加盟店としての役割や義務を十分に理解しているかどうか、しっかりと確認しておく必要があります。
こんな加盟希望者は加盟させてはいけない!
加盟者を選定する際の着眼点を紹介しました。
ここからは、「加盟させてはいけない人」の具体的な特徴を確認していきましょう。
①フランチャイズ本部に依存する傾向がある人
先にご説明した通り、フランチャイズシステムでは、本部は加盟者のサポートはしますが、加盟者の収益を保証するわけではありません。
フランチャイズ本部のノウハウを用いるとはいえ、必ず成功する訳ではありません。
ですから、加盟者には「自らの力で成功をつかみ取る覚悟」を決めてもらう必要があります。
なので、「フランチャイズに加盟すれば本部が成功させてくれる」といった依存思考の人は、加盟をお断りしたほうがよいでしょう。
②自分の利益のことばかり考えている人
フランチャイズチェーンは、様々な考えを持つ経営者が、一つのフランチャイズシステムに基づいて共同で事業を行う組織体です。
それぞれの加盟店が自らの利益を最優先して好き勝手に行動してしまっては、フランチャイズチェーンとして成り立ちません。
例えば、本部が企画した全店施策が自分のお店には不要だと考えて、一部の加盟店が施策の実施を見送ったとしたら、チェーン全体の信用力が低下することになるでしょう。
このような事態を避けるためにも、自分の利益のことばかり考えているような人は、加盟をお断りすべきです。
③自分流のやり方にこだわりがある人
加盟者はあくまでフランチャイズチェーンの一員として営業します。
仮に、同じブランド名であるにもかかわらず取扱商品やサービスが異なれば顧客は混乱してしまいます。
これではチェーンとしての信頼を得ることができません。
そのため、加盟者には、フランチャイズ本部が定めたルールに従って店舗を経営してもらう必要があります。
自分が思っているようにお店を経営したいと思っている方は、フランチャイズ加盟には向いていないので加盟を見送った方がよいかもしれません。
なお、フランチャイズ加盟者から見たフランチャイズのメリット・デメリットについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
④少しでも信頼に欠けるなにかを感じる人
フランチャイズ本部のブランドや看板、商品やサービスを提供している以上、加盟店に不祥事を起こされてしまえばフランチャイズチェーン全体が大打撃を受ける可能性があります。
加盟店審査の段階で、少しでも信頼に欠けるなにかを感じたら、その不信感や違和感が拭えるまでしっかりとコミュニケーションを取りましょう。
それでもその不信感や違和感を拭うことができなければ、フランチャイズ本部としての責任にも関わってくる部分ですので、加盟をお断りしたほうが良いでしょう。
加盟店審査はどのタイミングで行う?
最後に、加盟店審査を行うタイミングを確認しておきます。
①経営陣との面談
フランチャイズ加盟の前には、加盟希望者とフランチャイズ本部の経営陣とで、必ず面談を実施しましょう。
面談では、フランチャイズ本部の経営理念や経営方針をしっかり伝えるとともに、加盟者の志望理由やフランチャイズ加盟を通じて実現したいことを確認します。
時間をかけてお互いの目指す姿を共有し、信頼関係をもって事業活動を進めていくことができるかどうかを厳正に見極めます。
②面談以外の接点
フランチャイズ本部の経営陣と加盟者との面談は、加盟審査の重要な局面ではありますが、たった1度の面談で、加盟希望者の本質を正確に見極めるのには限界があるのもまた事実です。
そこで、加盟希望者が現れてから、経営陣との面談に至るまでの一連の流れの中で、ある程度の審査を進めておくことが大切です。
具体的には、加盟希望者が正式加盟に至るまでには本部と以下のような接点があるはずです。
・加盟希望者と本部担当者がはじめて接したとき
・加盟希望者が事業説明会に参加したとき
・加盟希望者が店舗見学に訪れたとき
これらの接点の中で簡単な審査を行い、所感とあわせて記録しておけば、最終面談の際に重要な参考資料となるはずです。
まとめ
フランチャイズ展開の成否を左右する加盟店審査の考え方について解説してきました。
フランチャイズ加盟交渉の中で、加盟希望者の本質を正確に見極めることが至難の業であることは重々承知しています。
しかし、加盟店審査の巧拙が、フランチャイズ展開の成否を決定づけるのは間違いありません。
そのため、フランチャイズ本部として、本部の経営者として、加盟店審査の基準と審査方法を確立させることが大切です。
それが本部の役割の1つでもあると思います。
その他、フランチャイズ本部の役割については下記のコラムにまとめていますので、ぜひ併せてご覧になってみてください。