整骨院業界有数の大規模チェーンであるMJG整骨院を運営する株式会社MJGが事業継続を断念しました。
新型コロナウイルス感染症による影響も一因といえますが、この事例から、フランチャイズ本部が学ぶべき教訓を読み取ることができます。
整骨院チェーン「MJG接骨院」を展開していたMJG(東京・新宿)が4月10日に東京地裁へ自己破産を申請し、同日、破産手続き開始決定を受けた。急速な店舗拡大にオペレーションが伴わないなか、2019年11月に行政処分がマスコミで報じられ、信用が低下。さらに新型コロナウイルスの影響で20年2月以降、業績が大幅に悪化し、先行きの見通しが立たなくなり、事業継続を断念した。
MJG整骨院が経営破綻に追い込まれた要因の1つに、フランチャイズ本部としての社会的責任を軽視した経営姿勢があるでしょう。
記事では、景品表示法違反、労働条件の不利益変更、不適切な保険請求指示、高額な施術回数券の販売強要といった内容が挙げられていますが、全国に100店舗超を展開する業界最大手チェーンとしては、あまりにもお粗末な内容が目立ちます。
これは、フランチャイズ本部としての社会的な影響力を認識していなかった結果といえるでしょう。
その結果、MJG整骨院はブランドイメージを悪化させ、顧客離れを招いたものと考えられます。
本部のビジネスを大きく広げることを前提とするフランチャイズシステムは、店舗に訪れる顧客はもちろんのこと、店舗で働く従業員、フランチャイズ加盟店、各種取引先など、多くの人や企業がかかわることになります。
必然的に、その社会的責任も一般的なチェーン店と比べて大きくなります。
この点を認識し、その社会的責任を果たす経営を行うことは、フランチャイズ本部として最低限の責務といえます。
続いて見落とせないのが、同社が導入していたフランチャイズシステムです。
具体的には、加盟店に出店費用を負担してもらい、同社が運営を担当するフランチャイズシステムを導入していたようです。
加盟店オーナーから見れば、投資に近いイメージでしょう。
この場合、資金的にはフランチャイズ展開のメリットを享受でき、短期間で大量出店が可能となりますが、本部が運営を引き受ける以上、その採用から教育、マネジメントまでは本部の責任範囲となるため、人的側面においてはフランチャイズ展開のメリットを得ることができません。
フランチャイズ業界では、加盟者が人材の採用、教育、マネジメントの責任を負うことが常識であり、このあり方は特異なモデルといえます。
整骨院業界では、以前から人手不足問題が深刻化しており、人材の確保・育成が経営上のリスクとなっていました。
この点について特別なノウハウがあれば本フランチャイズシステムで問題ないのでしょうが、報道を見る限り、その問題に対する解決策をもたないまま、店舗拡大を優先してフランチャイズ展開を進めてしまっていたようです。
その結果、施術者の不足、サービスレベルの低下などの事態を招いたのではないでしょうか。
事業拡大を最優先するのではなく、フランチャイズシステムと自社のビジネスモデルを深く理解し、自社にとって適切なフランチャイズシステムを構築することが大切です。
なお、フランチャイズ本部つくりや成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
なお、フランチャイズ本部構築に失敗する企業のパターンを詳しく知りたい方は、こちらのコラムもあわせてご覧ください。