時代の変化、特にここ2・3年の変化の波はフランチャイズビジネスにも大きな影響をもたらしています。業種・業態によって店舗ビジネスが破綻する業界と、リアル店舗での価値を高め続ける業種・業態とが入り乱れています。
バーチャルとリアルの相反する世界を股にかけて活躍しなければならず、非常に難しくとも、且つエキサイティングな世の中に突入しました。
店舗ビジネスの栄枯盛衰がリアルに感じる時ですが、今の時代の店舗ビジネスの強さを感じることもできます。
チケット販売大手のぴあは9日、「ぴあステーション」など全国77カ所の店舗を6月末までに全て閉鎖すると発表した。同社のチケット販売手段はインターネットが中心になっている上、新型コロナウイルスの影響で実店舗での売り上げが減少。同社がチケット販売事業を始めてから37年にわたる店舗販売の歴史に幕を閉じる。
ぴあは約1750万人の会員を持ち、年間約7500万枚(2020年3月時点)のチケット販売を手掛ける。現在の取扱数の約9割はネットやコンビニエンスストアでの販売が占める。チケット店舗はフランチャイズチェーン(FC)方式により最盛期の1999年には611カ所まで増えたが、直近では77カ所に減っていた。
20年は新型コロナの影響によりイベントやコンサートが軒並み中止となり、チケット販売数が激減。21年3月期の連結最終損益は65億円の赤字(前の期は1億2100万円の黒字)を見込む。中でも対面販売となる実店舗での販売数は、これまで全体の3%ほどだったが、20年は1%未満まで落ち込んでいた。全店舗の閉鎖によりコストを削減すべきだと判断した。
同社は84年、「ぴあステーション」などの実店舗で日本初のコンピューターシステムによるチケット販売を開始。音楽コンサートやスポーツイベントなどのチケットを多数取り扱い、人気アーティストのチケット発売日には前夜から店舗前に長蛇の列ができることもあった。
今後はオンラインチケット販売サイト「チケットぴあ」と全国のコンビニでチケット販売を続ける。20年12月からはスマートフォンアプリ内でのチケット販売も始めており、販売ルートのデジタル化を加速させる。
2021/04/09 日本経済新聞
ぴあ、全店舗を6月末までに閉鎖、コロナでチケット不振
コロナの影響で各種イベント開催の中止や延期で「ぴあ」のチケット販売が不振です。
提供する商品・サービスからして防ぎ用のない事態とも言えます。
しかしここで疑問なのが、未だに「ぴあ」の実店舗が77店も存在していたということです。
ビジネスモデルのからくりの中に実店舗を残すメリットがあったのか、フランチャイズ契約の残存期間が理由なのか真意は分かりません。
しかし、ネット販売、スマホ認証、実券販売があるとしてもコンビニ発券が主流であったはずです。
こう考えると「ぴあ」の実店舗閉鎖は、コロナの影響以前の課題として、早晩起こっていた事象と言えるでしょう。
今回の記事を見てみても、コロナ倒産・コロナ廃業の根底は、元来のキャッシュ不足のビジネスモデルが背中を押されたと考えるのが妥当のようです。
それでは、これからは実店舗が振るわないのかというとそうではありません。
逆に、ロードサイド出店の良さが見直され、地価の下落も後押しとなり、出店を加速させる業種・業態もあります。
生活雑貨のハンプティダンプティは、フランチャイズ展開でのドミナント出店で攻勢をかけると発表しています。早期にブランド認知を高めること、地方への出店拡大を視野に、フランチャイズ展開を軸に出店します。
個人向け新車リースの事業会社や、コロナ禍でも食品スーパーは好調ですが、中でも神戸物産の「業務スーパー」の出店は、基本的にフランチャイズ展開です。
言わずもがな、「ワークマン」の出店基軸もフランチャイズです。
好調な企業と不調な企業の差はますます広がる勢いです。
好調な企業を見ているとPB商品が目につきます。他社にないオリジナルの商品です。
流通業・小売業でありながら商品企画力・開発力が業績を大きく左右しています。
コンビニは苦戦が続きますが、セブンイレブンの業績の傷が最も小さいようです。
商品力の違いと言われています。
ユニクロ、ワークマン、業務スーパーなど、共通しているのは商品開発力です。
では何故、流通業・小売業の商品がこれ程まで強くなったのでしょうか。
これは「売り切る力」にあります。PB商品は原則、小売企業の全量買い取りです。
消費者情報をもとに商品開発をして、それを自社の店舗(ネット)で売り切るからこそ利益も稼げるのです。
「適正価格で適正な量を売り切る」ここが養われてきているからこそだと思います。
商品の廃棄問題、在庫問題がクローズアップされてきました。
大量生産・大量消費を前提としたブランドメーカーによる作り過ぎ問題です。
新たな製品・商品・サービスを生み出すのは難しいものです。
しかしそれ以上に「売り切る力」が最も難しいのだと感じさせる時代となりました。
この「売り切る力」を備えた流通業者がこれから暫くは最強なのかもしれません。
バーチャルとリアルの店舗を使い分けるということは、「売り切る力を備える」ということが言えるのではないでしょうか。店舗ビジネスはまだまだ健在です。
なお、ポストコロナ時代に選ばれるフランチャイズ本部について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。