フランチャイズとは、本部の提供する一定の仕組み・ノウハウを身につけることで、加盟店がスムーズに店舗運営できるビジネスモデルです。
それはFC本部の蓄積してきたノウハウが体系化されているからこそ成り立つものです。
今回はその体系化されたマニュアルについて触れていきます。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
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1.マニュアル化とは暗黙知を形式知に変換する作業
FC本部のマニュアルには様々なものがあります。
そのビジネスにおいて全くの素人である加盟候補者が、新たなビジネスを始めることができるために、当然ながらマニュアルは細かい内容まで作成されていなければなりません。
しかしここで大事なことは、店舗オペレーションが事細かく記載されたものだけで完成ではないということです。
何故このオペレーションになっているのか、どうしてこのビジネスモデルになっているのか、採用したばかりのアルバイトスタッフにも、考え方が伝わらなければならないのです。
FC本部(社長)の考える理念や考え方、経験値、勘、直感など、言語化しにくいものを「暗黙知」と言います。
自社のビジネスを語る上で、重要な要素です。
この言語化し難いものを何とか体系化・形式化・言語化したものがマニュアルになります。
ですからマニュアル化は、FC本部を立ち上げる前提として必須の作業なのです。
そしてマニュアル作りは非常に大変な作業ですが、本部立ち上げにおいて手を抜けない要素といえます。
特にサービス業においては他業種よりもマニュアル化が重要になります。
それはサービス業には以下のような独特の特性があるからです。
サービス業の持つ特性を美容院の例で見ていきましょう。
①無形性
サービス財は無形であるため、利用前にその品質水準を評価し難い
例:カットしてみなければ品質の判断ができない
②品質の変動性(非均質性)
同じ料金でも、提供者によってサービスの品質に差が出てしまう
例:美容師個人のカット技術にばらつきがある
③生産と消費の不可分性
生産と消費が同時でなければならず、切り離せない
例:必ず来店頂く必要がある。ネット販売ができない
④消滅性
サービスは消費後に残らない。有形財のように在庫できない
例:カットした直後からヘアスタイルは変わり続ける。翌日からは顧客自身がセットする
⑤需要の変動性
需要量が季節や時間帯により大きく変動する、偏る
例:週末、月末、年末、成人式、入学式、入社式、七五三 等イベントに集中する
これらの不確実性を可能な限り克服し、いかに品質や需要のばらつきを最小限にするかが、サービス業における提供価値や時間の均一化による生産性向上の鍵となります。
その鍵がマニュアル化であり、マニュアルの役割なのです。
2.フランチャイズ本部に必要なマニュアルの種類
FC本部立ち上げに必要な主なマニュアルと記載内容は以下の通りです。
①フランチャイズマニュアル
ビジネスにおける理念、チェーンとしての経営方針、本部の役割と加盟店の役割、SV指導 等
②オペレーションマニュアル
店舗オペレーション、設備・機器操作、接客方法、お客様対応 等
③管理マニュアル
人事、金銭、情報、在庫、顧客、売上・利益、関連法規 等
④マーケティングマニュアル
本部の販売促進、加盟店の販促活動、販売手法、SNS活用 等
大きく分けても最低限これらのマニュアルは必要です。
細かく分ければアルバイト教育やデータ活用など様々ありますが、S V指導を充実していけば対応もできます。
もし1つだけ加えるならば、新人スタッフでも直ぐに確認ができる「簡易オペレーションマニュアル」はあった方がいいでしょう。
なおマニュアルの形は、FC本部や提供するビジネスモデルにより、電子マニュアルや紙媒体、辞書型など、使いやすく管理しやすいものを選ぶ必要があります。
そして加盟店研修時には、これらのマニュアルを提示し、マニュアルに沿って研修することが大変重要です。
開業前研修時に見せられたノウハウが乏しすぎて、店舗のオープン前にFC本部へ不満をぶつける加盟者も存在します。
オープン前から信頼関係にひびが入ることは、本部と加盟店相互にとって不幸なことです。
一方、FC本部にどれだけノウハウが蓄積されていても、目に見える形のものがなければ、加盟店は非常に不安になるものです。
最低限のオペレーションノウハウを提供するのみで、その後は加盟店に自由に店舗運営をさせるビジネスモデルもありますが、FCビジネスにおいては、形あるものをしっかりと準備しておくことが王道であると言えるでしょう。
なお、フランチャイズ展開に必要なマニュアルのつくり方と管理のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
3.マニュアルは改訂し続ける必要がある
マニュアルは一度作成して終わりではありません。
新しい販促策や販売手法、考え方、関連法規など、日々変わっています。
それに伴ってマニュアルも日々改訂されていなければ、ビジネスモデルの陳腐化を招きます。
新しいサービスの導入や関連法規の改訂に伴い、FC契約書の内容変更時には「覚書」で対応することがありますが、それと同じようにマニュアルも変わって然るべきです。
マニュアルの作り込みや改訂の作業は、自社のビジネスモデルの整理となり、新たな加盟店獲得や新たな自社利益を得るヒントにもなりますので、決して怠らないことをお勧めします。
まとめ
マニュアルは単にオペレーションを体系化しただけのものではありません。
ただの取扱説明書でもありません。
そこにはこのビジネスモデルに行き着いた考え方や理念が反映されていなければならないのです。
その上で、マニュアルを見る加盟店の立場に立って作成することが大切です。
見た人が誰でも何をどのようにすればよいかわかる、つまりFC本部に比べ、そのビジネスのプロではない人が運営することを前提とした書きぶりが求められるのです。
ノウハウが凝縮されたこれらのマニュアルに、加盟店は対価を払います。
加盟して失敗したと思わせないためにも、本部として恥ずかしくないマニュアルを準備しておきたいものです。
当社では、スマートフランチャイズ構築コンサルティングにおいて、FC本部のマニュアルの整備、拡充等、マニュアル作りをお手伝いできるノウハウがあります。
是非ご相談いただければと思います。