店舗ビジネスにおいて、立地はとても重要な要素です。
そのため各社それぞれのノウハウにより、商圏の市場規模を確認しながら、出店競争を繰り広げています。
新規出店数こそ、フランチャイズ本部の成長エンジンであり、市場シェア確保の源泉であるからです。
今回は、これまでの大手フランチャイズ本部の出店戦略を見ながら、中小フランチャイズ本部が今後とるべき出店戦略について考えていきます。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
1.大手フランチャイズ本部におけるドミナント立地戦略の原点とは
店舗ビジネスの出店に際し、これまで多くの大手フランチャイズ本部は地域を絞って集中的に出店する「ドミナント戦略」を採用してきました。
ドミナント戦略には、以下のようなメリットがあります。
・物流機能の効率化
・S V巡回機能の効率化
・地域へのブランド浸透の迅速化
・地域や地元企業との関係強化
・地元企業への交渉力強化
つまりドミナント戦略は、大手フランチャイズ本部の事業を、急速かつ効率的に成長させ、高収益へと導いてきた出店戦略といえるでしょう。
しかし実はドミナント戦略の原点は、お客様視点からの発想なのです。
「鮮度のいい商品を、お客様の欲しいタイミングで、お客様に納得いただける価格で提供する」方策を考えた結果、ある一定の地域に集中出店することにより、物流機能やSV機能の効率化が図れるドミナント戦略にたどりついたのです。
一見、効率よく出店するフランチャイズ本部成長のための戦略に見えますが、「お客様の立場に立った結果こうなった」と考えるのが本質です。
なので例えば中小フランチャイズ本部が、そういった大手フランチャイズ本部の原点となる視点を知らずに、表面だけを真似ても、ドミナント戦略のメリットをうまく享受できないのです。
2.自社ブランド内での競合に対する考え方とは
ドミナント出店では、商圏内において、新規加盟店と既存加盟店との間に、自社ブランド内での競合という課題が発生します。
自社ブランド内での競合により、お互いの売上を食い合う、いわゆるカニバリゼーションが発生し、結果的に既存店の売上が減少するのです。
自社ブランドの商圏内の客数は、一時的に新規店と既存店へと分散しますので、当然ながら既存店の売上に影響はあります。
しかしその商圏を一段高い視点から見てみると、商圏内の市場全体において、新規出店により、市場規模そのものは拡大しているのです。
コンビニエンスストア業界の例を挙げると、日販50万円の既存店の向いに、自社ブランドのコンビニエンスストアを出店したとします。
当然、一時的に既存店の売上は下がりますが、50万円の日販が25万円に半減する訳ではありません。
実際のところ、40万円程は確保し、新店舗も同水準の日販40万円程で立ち上がります。
ということは、その商圏内のコンビニエンスストアの市場規模は、50万円から80万円に拡大していることが分かります。
新たな出店が人の動きを変え、街を活性化させることで、市場規模を拡大させる効果を生んでいるのです。
その拡大した市場規模を自社ブランドで獲得することにより、商圏におけるフランチャイズ本部企業のシェアを拡大させるのが、フランチャイズ本部の狙いです。
そしてシェアを拡大することで、自社ブランドの浸透度、認知度を高め、結果的に先行出店している既存加盟者も客数が増えて恩恵を受けられるのです。
これは、店舗数が増えることで、既存の利用客の利便性が増して来店頻度が増え、一方でこれまで利用していなかった新規のお客様が来店することが積み重なっています。
また仮に自社が出店しなくても、競合他社が出店することで売上に影響がでます。
そうなる前に自社ブランドの浸透度を高め、市場シェアを拡大することが得策なのです。
3..これからのドミナント出店戦略に必要な“安心感”とは
ドミナント出店は今後も重要な戦略と言えるでしょう。
人口減少によるマーケットの縮小や、オンラインショップの台頭による影響はありますが、リアル店舗は今後も重要な消費者の購入拠点です。
一定の商圏内でのブランド浸透は、そのブランドへの認知度を高め、「知っている」という“安心感”を醸成します。
この安心感がなければ商品の質にまでたどり着きません。
そういう意味でも一定量のドミナント出店戦略は今後も有効と言えます。
また消費者の動きも毎日一定である訳ではありません。
平日の出勤や通学の行動パターンと、休日の行動パターンは異なりますし、1年前と比べても生活様式が変わりました。
どの生活場面でも同じブランドに遭遇する“安心感”は、入店のきっかけになるはずです。
コロナの影響で、消費者の店舗に対する“安心感”の内容も変わってきました。
これまで“安心感”といえば、主に「一定の品質を維持した商品やサービス」「店舗やブランドを知っている」ことを指しました。
今はそれらに加えて、「密を避けるための工夫」がなされているのかも消費者は見ています。
物理的な店舗設計や営業時間の長短による客数の分散などです。
これからの出店は店舗面積の拡大も必要でしょう。
営業時間についても全店が一律でいいのか、同一エリアでは営業時間に差をつけて、お客様の利便性を損なわずにも密を避けるなど、見直すべきところは様々あります。
これまでとは異なるドミナント出店戦略が必要と言えます。
まとめ
ブランド浸透や認知度、事業の効率性から考えるドミナント出店戦略は今後も有効な手段と言えるでしょう。
しかしこれまでと同じやり方で出店していては失敗します。
人口減少もあり拡大一辺倒では経営は成り立ちません。
生活様式も変わりました。
現に、コンビニ業界では新規出店ペースに急ブレーキがかかっています。
withコロナ時代に合った“安心感”を与えるドミナント出店戦略を、中小フランチャイズ本部は自社の事業モデルに合わせて、改めて構築するタイミングと言えるでしょう。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。