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判例から見る、FC 契約締結時における加盟者への情報提供の考え方とは

FC契約のビジネスモデルにおいては、事業のノウハウを提供する者と、それを活用して事業を行う者が存在します。
小売業や飲食業などのFC本部は、FCビジネスにおいては物販や飲食を提供する企業ではなく、「ノウハウやデータの情報商材を売るサービス業」と言えます。

そのため、この加盟店へ提供する情報の質や量、正確さについて、度々争われることがあるのです。
今回は、「本部による情報提供」に関する判例に触れ、FC本部が持っておくべき「情報提供の考え方」について記したいと思います。

なお、フランチャイズ本部つくりや成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。

フランチャイズ本部構築の極意。5つの手順と成功する3つのポイント

FC本部には情報開示・説明義務が問われる

FCビジネスにおいて提供するノウハウや情報は、本部が作り上げたビジネスモデルの中に存在するため、本部と加盟店の間には顕著な情報偏在があり、過去の判例では「加盟者は情報弱者である」という認識に立って判断されています。

加えて、FC契約書は本部が一方的に作成するものであり、そこに加盟店の意見が反映される余地もなく、加盟者にとって多額の投資と容易に離脱できないという拘束力も持つことから、この加盟者リスクを憂慮されているのです。

したがって、加盟者が加盟を意思決定する上での一定の情報提供と説明義務が、本部に課せられていると解釈できます。

FC本部に情報提供義務・説明義務を基礎づける法文上の根拠の例として以下のものが挙げられます。
・中小小売商業振興法
・独占禁止法
・公正取引委員会が示したフランチャイズガイドライン
・JFA(フランチャイズチェーン協会)の倫理綱領

FC本部は常々、「本部と加盟者は対等な立場で、互いに独立した事業者であり、自己責任で経営をする」と主張します。

この主張は原則的には間違いではありませんが、加盟者が「加盟の判断材料」を持たせる必要性に言及した判例が出ていることを、FC本部は認識し、準備をしておかなければなりません。

加盟候補者が最も欲しい情報の提供

例えば“加盟金”は、市場調査や売上予測などのリサーチやそのリサーチから得られた情報を元に、加盟者にコンサルティングするための対価と解されています。

そして加盟候補者が最も欲しい情報は、自身が出店した場合に参考になる売上予測や加盟者利益をイメージする損益シミュレーションです。

しかし本部としてはなるべく出したくない情報です。
予測と実績との乖離は、本部の分析(予測・仮説)能力を問われ、訴訟リスクもあります。
しかも売上予測に絶対はなく、開業してみなければ分からないのが現実だからです。

本部にとって悩ましい問題ですが、同様の立地でのモデルケース、直営店でのモデルケースなどの提示は必要となります。

経済情勢や社会情勢、マーケット・商圏の変化から、科学的に正確な予測などは不可能であるため、予測が外れたことにより本部の提供した情報が直ちに不当であると判断されるものではありません。
そのことはFC契約書にも記しておく必要があります。

情報提供で本部が絶対にやってはいけないこと

一方、現場の加盟店開発担当者レベルでは、加盟者獲得競争の中で良からぬ情報提供も発生します。

①売上・客数予測の水増し
出店予定の立地・商圏の昼間人口、夜間人口、人流、所得など、様々な要素を前提条件として売上予測を立てます。

これには行政の出す統計情報もありますが、環境変化から一定程度上振れ・下振れさせる余地を持たせてシミュレーションします。

それを判断するのは現場担当者です。
ここで「鉛筆を舐める」行為が出てきます。

出店基準に満たさない売上予測が出れば、多少の上振れは容認されている会社もあります。
しかしあまりにも乖離すれば不正のレベルです。

②損益分岐点を下回るシミュレーション結果
予測売上高だけを見ると平均を上回って、高い損益シミュレーションの結果となるケースにも落とし穴があります。
客数が多いが実は客単価が極端に低いケースや、その立地特有の経費が発生するケースです。

コンビニの例では、ロードサイド立地の客単価は700円前後ですが、駅前立地では300円台の店舗も少なくありません。
駅前立地は客数をロードサイドの2倍以上捌かなければならないため、人件費がかさみ、利益を圧迫します。

大型商業ビルへの出店では電気代が高額になるケースもあります。
発電方法の違いやテナント毎の電気代の割当の違いなどです。
電気代が上がれば、これも利益を圧迫します。

③自社の出店後、数ヶ月後に予定されている競合出店情報
商圏の物件を探している段階で、商圏内での競合他社の出店情報が舞い込んでくることもあります。
それを伏せた上で加盟させることは悪質と言えます。

判例でも開示を避けた行為は、加盟判断を歪めたと解釈されています。

売上・損益シミュレーションは水物です。
AIを駆使したアルゴリズムの精度が高くなっても正解には辿り着けません。
だからと言って虚偽の情報や情報を隠す行為は許されないのです。

まとめ

本部が提供する情報は非常にデリケートなものです。
提供した情報から責任を問われることもあります。

しかしその本部のリスクよりも、本部に将来を委ねる加盟者側のリスクの方が大きいのは明白です。
100%正確でなくとも、「客観的かつ的確な情報を提供すべき信義則上の保護義務」があると解釈されます。

売上予測が損益分岐点を下回るシミュレーションであるのに開示しないケースや、情報の不正確さや不十分さが、業績不振と相当の因果関係が認められた場合、損害賠償を免れないことを開発担当者は認識しておく必要があります。

会社としてそういった意識を持って開発担当者を教育しておくことが重要と言えます。

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