フランチャイズ本部を立ち上げることができたとしても、加盟候補者を探す次のステージで大きな壁にぶつかります。
近年ではメディアにも取り上げられ、鳴り物入りでフランチャイズビジネスに参入した外食事業会社も、当初公表された計画通りに出店が進んでいないようです。
ビジネスモデルの問題なのか、物件確保の問題なのか、何が原因で加盟店獲得が遅れているのかは定かでないですが、コロナ禍で空き物件は安価で多数発生しているはずですので、加盟店獲得の遅れが原因と考えるのが無難と言えるでしょう。
今回は、フランチャイズ加盟店獲得についての基本的な考え方について触れていきたいと思います。
加盟店開発に妙手はない
加盟店開発には大企業であっても大変苦労します。
地道に自社の理念やビジネスモデルの魅力を説明するとともに、店舗の売上と利益を積み上げていくしかありません。
その中でも比較的優位に加盟店開発が進んでいるベンチャーFC本部の例としては、以下のような特徴があげられます。
①販売する商品やサービスに惚れて、加盟店をやらせて欲しいと懇願されるケース
②直営店や1号店の盛況ぶりを見て、加盟希望者自らが連絡してくるケース
③「のれん分け」で店舗展開をしてきたが、フランチャイズ展開の道が開けてきたケース
④経営者がメディア等の露出により知名度が高く、フランチャイズ本部の信用度が高いケース
表面上は急拡大に見えても、結局のところ、販売する商品やサービス、店舗の実績、ビジネスモデルや経営者の人間性など、「信用スコア」が高いことが前提となっています。
そこに行き着くまでには大変な苦労があったと想像できます。
●加盟店開発代行は本当に有効なのか
最近は、フランチャイズ本部立ち上げを支援する専門業者やコンサルティング会社が増えてきました。
あらゆる経験値を持った専門家を活用するのは有効です。
大手フランチャイズ本部の出身者や金融機関出身者、中小企業診断士などがおり、その専門性も様々です。
その支援内容で気になるのが「加盟店開発代行支援」です。
漠然とフランチャイズ加盟を意識している方々が多く存在しますが、なかなかマッチングまでたどり着けないものです。
それを支援するのが「加盟店開発代行支援」事業者です。
本部立ち上げから加盟店開発代行まで手掛けてもらえるパッケージもあります。
フランチャイズ本部経営者の立場からすれば至れり尽くせりです。
例えば、「1年で10件のフランチャイズ契約を成約させる」等の約束事となります。
加盟店開発代行支援業者の実施する加盟店開発に特別な手法がある訳ではありません。
できる手法はフランチャイズ本部がやろうが代行業者がやろうが同じです。
①セミナーを開催して加盟希望者を募る(リアル・オンライン)
②アントレなどのフランチャイズ専門媒体に広告を出す。
③メディアで取り上げてもらえる仕掛け、話題性を作る。
④他業種・業態の加盟者を勧誘する。競合他社を勧誘する。
「1年で●●件の契約を成約する」などの契約を本部と代行業者で結んだ場合、当然に数値目標達成のバイアスがかかります。
そして、加盟店開発代行支援業者は、契約後の本部と加盟者との関係には関与しません。
そのため、「どんな加盟店でも決まればOK」という解釈になることもあるでしょう。
これで本当にフランチャイズビジネスが成り立つでしょうか。
加盟者の思うような売上や利益に届かなければクレームの嵐です。理念がしっかりと共有されていれば対話も成り立ちますが、加盟店開発代行業者の中には成約件数の数値目標ありきのところもあり、そのような業者は甘い言葉で勧誘するのがオチです。
これでは、本部の理念など関係のない事態であり、その後始末をするのは本部の社員です。中途解約・契約解除・係争への発展など、明るい未来イメージができません。
それらの課題を覚悟の上で立ち上げ当初は代行業者に依頼するのも手ですが、苦労は自社が自ら背負うことが適切ではないでしょうか。
フランチャイズはある意味宗教的な要素もあります。
経営者の考え方、理念に共感できる人が集まり、儲かり始めると人が人を呼んできます。
そう考えるとやはり加盟者も経営者の直接的な働きかけに集まってくるのではないでしょうか。
まとめ
FC本部立ち上げ支援をしているクライアントから、「加盟店開発代行も請け負ってもらえないか」などと言った相談も頻繁にあります。
しかしこの「加盟店開発代行」はお断りしています。
それはフランチャイズ本部の経営者の役割であると考えるからです。
従って加盟店開発代行業者を活用した加盟店開発はお勧めしません。
自社の考えや想いが確実に加盟候補者に伝わるとは思えないからです。
自社のビジネスモデルや理念は、経営者自身の言葉で説明しなければ意味がありません。
ここは妥協せず、楽をせず、加盟店開発に取り組んで頂きたいと思います。