最近よく語られるビジネス用語に「VUCA」があります。誰も予測できないこと、不確実性が高まっていることを意味する造語です。
「VUCA」への対応は、変化のスピードが年々高まっている時代に欠かせない概念と言えます。
その中でFCビジネスも例外なく意識せざるを得ません。
そこで、今回はこの「VUCA」の時代にFC本部はどう対応していくべきかについて考えてみたいと思います。
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(1)VUCAとは
VUCAとは、現代の特徴を表す4つのキーワード、具体的には「Volatility:変動性・激動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:不透明性 曖昧性」の頭文字をとった造語です。
各キーワードが意味する内容は以下のとおりです。
Volatility (変動性・激動性)
商品やサービスのライフサイクルは年々短くなっています。様々な商品やサービスに触れられる環境にある消費者が飽きるスピードも早くなっているのです。
一方、人類の寿命は伸び続けています。加えて世界的に見れば人口も伸び続けています。
SNSなどを通じて個人が多様な情報を受発信できるため、消費者の需要は細分化され、多様化し、選択肢も増えました。目移りしやすい環境であるということです。
Uncertainty (不確実性)
いつどこで何が起きるのか、全く予測が不可能な時代です。大震災・暴風雨等の自然災害、リーマンショック、新型コロナウイルスのパンデミックなど誰も予測していなかった事態です。
しかもインターネットで世界が繋がり、デジタル化・グローバル化した時代には、危機が瞬時に自身に襲いかかってくることを意識しなければなりません。
Complexity (複雑性)
経済がグローバル化・デジタル化したことで、ビジネス事態が複雑化してきました。
カントリーリスク、商慣習、常識、法律、文化など、様々な要因が絡み合って、これまでのビジネス習慣が通用しない時代になっています。
Ambiguity (不透明性)
平均寿命が伸び、企業が終身雇用を維持できなくなり、働き方改革や45歳定年制の議論も始まりました。寿命をどう全うして生きて行けばいいのか、何歳まで働けばいいのか、個人に置き換えると不透明性は高まるばかりです。
5年後、10年後にどのようなマーケットになっているかが、常に不透明な状態で時代が進んでいくのです。
(2)VUCAに適応したFCビジネスに必要な力とは
このように、誰も予測できない、不確実性が高い時代となり、FC本部も従来とは異なる力が求められるようになりました。
特に重要なポイントとしては、次の4点があげられるのではないでしょうか。
①自社の課題と解決策を見つける力
今は社会の課題解決型のビジネスが求められている時代です。
・社会課題に対して自社のビジネスモデルは追いついているのか、
・ユーザー・消費者に対して社会課題を解決できる商品やサービスを提供できているのか、
・その具体的な解決方法は何なのか、
等といったことに対し、自ら仮説を立てて課題を発見し、解決する力が必要となっています。
②変化のスピードに対応できる力
創業当初に考えたビジネスモデルは、環境変化に合わせて当然にマイナーチェンジしていく必要があることを心得ておかなければありません。上場企業でも、創業時と全く異なる事業会社になっていた事例や、祖業の売上構成比が小さい企業など多く存在します。
柔軟性を持った考え方と機敏に行動できる組織づくりが必要となります。
③学びつづける力、実践する力
変化へ対応するためには常に新しい情報に触れて学び続けなければなりません。知識や情報はどんどん塗り変わっていきます。10年前に語られていたことと全く逆に動いていることも日常茶飯事です。
逆に全く陳腐化せず普遍的な考え方も存在します。何が正しくて何がフェイクなのか、溢れる情報を選別する能力も欠かせません。
正しい情報を得るためにはやはり一次情報(実際に体験して手に入れた情報)に触れる必要があります。正しい情報を得るには自ら実践することが最も近道なのです。
④理念・ビジョンを明確に定義する力
VUCAは予測困難な時代を表すものであり、変化への即時対応が求められますが、軸足はしっかり持っておかなければなりません。それが「理念・ビジョン」です。
自社のビジネスモデルから社会課題をどう解決するのか、その為に選択した商品やサービスの意味、提供方法、その先にある目標など、普遍的な「理念・ビジョン」が必要です。これが無ければ時代が変化する度にその場しのぎの対応となり、時代変化に翻弄されるだけになってしまいます。
ここが企業にとって最も重要な要素となります。
(3)理念・ビジョンの共有こそFCビジネスの根幹
企業には経営理念やビジョンが存在します。会社の基本的な考え方です。それを社員全員に本質的なことまで浸透させなければ事業は成功しません。
業績好調な会社とそうでない会社では、社員の「会社理念やビジョンに対する理解度」が大きく異なります。事業成功のためには、社員全員が会社理念やビジョンを深く理解していることが不可欠なのです。
そして、これはFCビジネスであっても同じです。
本部と加盟店が理念やビジョンを共有できなければ、そのFCチェーンが中長期的に発展していくことなどありえません。
ですから、FC本部は加盟者と「理念・ビジョン」を共有・共感できるかをしっかりと見極め、共有・共感できない方は加盟をお断りすべきなのです。
FCシステムでは、本部と加盟店は対等な関係性となります。本部は、加盟店を指導することはできても、命令することはできません。
そのため、店舗数拡大ありきで自社の「理念・ビジョン」を共有・共感できない方々を加盟させると、当然に失敗することになるのです。
事業成功のためには、「理念・ビジョン」の共有・共感が欠かせないのです。
この点が、FCビジネスのスタート地点と言えます。
まとめ
「理念・ビジョン」が確実に共有されていることで課題解決のスピードが速くなります。
課題が顕在化された時点で本部が加盟店を説得しなければならない事態も無くなります。互いに知恵を出し合い難局を乗り越える手段が見つけやすいと言えます。
「理念・ビジョン」の確実な共有は、互いのリソースを上手く活用し合う関係性であり、変化の早い時代に適したビジネススタイルと言えるでしょう。
なお、フランチャイズ本部の立ち上げ方や成功のポイントについてついて詳しく知りたいかたはこちらのコラムをご覧ください。