「コロナで経営環境が一変しましたが、これからフランチャイズ本部を選ぶにあたってどんなことに注意すべきでしょうか」
これは、先日弊社にご相談に訪れたフランチャイズ加盟により多角化を目指す企業経営者からいただいたご質問です。
2019年に発生した新型コロナウイルス感染症問題は、フランチャイズも含めて、世の中のあり方を一変させました。
これまで絶好調だった事業が、新型コロナウイルス感染症問題発生後は事業存続の危機に立たされている、、、
そんなケースも決して珍しいことではありません。
当然、フランチャイズ加盟希望者がフランチャイズ本部を選定する際の基準もこれまでとは異なるものになるはずですし、そうあるべきだと考えます。
そこで今回は、ポストコロナ時代に加盟希望者から選ばれるフランチャイズ本部となるために、フランチャイズ本部に求められる要件について考えてみたいと思います。
1.「コロナ禍で好業績をあげている=良い本部」とは言い切れない
新型コロナウイルス感染症問題が発生して以降、コロナ禍においても好業績をあげているフランチャイズ本部や業態に注目が集まっています。
例えば、飲食業でいえば、唐揚げのテイクアウト・デリバリー専門店、焼肉店などがあげられるでしょうか。
それに反応してか、弊社のお付き合いのあるフランチャイズ本部の一部にも、これまで展開してきた業種・業態を、上記のようなコロナ禍においても一定の業績をあげられる業種・業態に転換する動きがみられます。
しかし、ここで注意すべき点は、フランチャイズ加盟希望者にとって「コロナ禍で好業績をあげられること」が魅力となる期間は限られている可能性が高い、ということです。
これは考えてみれば当然のことでしょう。
全世界の研究機関が、新型コロナウイルス感染症の研究を進めており、すでに高い効果を確認済みのワクチンも現れています。
もちろんコロナ以前の状況に戻るには時間がかかるかもしれませんが、少なくとも1年~3年あれば、新型コロナウイルスがインフルエンザのようなものと同じレベルの事象になるものと考えるのが一般的な感覚ではないでしょうか。
そのように考えれば、新型コロナウイルス問題は過去の事象と比較して影響力や影響範囲が極めて大きい大事件ではあったものの、その本質は数ある環境変化の1事象でしかなく、コロナ禍において一定の業績をあげられたとしても、コロナの影響が過ぎ去ったとき、もしくは全く別の環境変化が発生した際に、フランチャイズ本部として優位性を保てるかどうかは別次元の問題であることがわかります。
むしろ、安直にコロナ禍においても一定の業績をあげられる業種・業態に転換するような行為は、企業にとってのリスクが高い印象です(もちろん、財務状況等から短期的にでも一定の売上を確保しなければならない状況の場合など、ケースバイケースではありますが)。
例えば、外食チェーン企業の多くが、コロナ禍でも好業績をあげている唐揚げ業態に続々と参入していますが、コロナが過ぎ去り、テイクアウトやデリバリーの需要がひと段落したときに、今の好調な業績が果たして続くものでしょうか。
私には、外食によくある“ブーム”のようにしか見えません。
2.ポストコロナ時代に求められるフランチャイズ本部の要件とは
それでは、ポストコロナ時代に加盟希望者から選ばれるフランチャイズ本部となるために、フランチャイズ本部に求められる要件とはどのようなものなのでしょうか。
この点を「ビジネスモデル」と「フランチャイズ本部としての姿勢」、2つの側面から考えてみたいと思います。
①ビジネスモデルの側面
現在は、新型コロナウイルス感染症問題に目が向きがちですが、この問題が発生する以前から、現代はVUCA時代といわれていました。
VUCAとは、
- V:Volatility(変動性)
- U:Uncertainty(不確実性)
- C:Complexity(複雑性)
- A:Ambiguity(曖昧性)
の頭文字を取ったもので、簡単にまとめると「将来の予測が困難な時代」という意味です。
実際、2020年がこんな大変な1年になると予想できた人はいないのではないでしょうか。
情報化、技術革新、国際化等が進み、いつ何が起きるかわからないのが現代です。
たとえコロナの問題がおさまろうとも、また近い将来、大きな環境変化が訪れることは
間違いありません。
そして、その環境変化の速度は、今後ますます増していくことでしょう。
VUCA時代に存在する企業、特に、ビジネスモデルを商売のタネとするフランチャイズ本部企業には、この「将来の予測が困難な時代」にも一定程度適応できるビジネスモデルを構築していくことが求められるのです。
例えば、以下のような要素が考えられるのではないでしょうか。
- 相関性が低い複数の収入の柱(リアルとオンライン等)を確立する
- 加盟店の自主性を尊重し、店舗毎に地域の顧客ニーズに最適化した店舗づくりを実現することで、顧客との盤石な関係性を築き上げる
- 流行りではない、顧客が本質的に必要とする商品・サービスを提供する
もちろん、短期的視点ではコロナに対応することは重要ですが、中長期視点では、VUCAに対応することがより重要であり、フランチャイズ本部としては、両者のバランスをとっていく必要があるのではないでしょうか。
②フランチャイズ本部としての姿勢の側面
今回のコロナ騒動では、加盟店支援に対するフランチャイズ本部の姿勢にも大きな差が現れました。
フランチャイズ本部の姿勢を大きく分けると、以下の3パターンに分類することができます。
直接的な支援を実施
ロイヤリティの減免、コロナ対策用品を本部負担で加盟店に提供 など
間接的な支援を実施
スーパーバイザーの支援頻度を増やしたり、国や地方自治体の支援制度を積極的に情報提供するなどして経営支援を充実 など
平時と変わりなし
コロナ危機に対して特別な対応を実施せず
前述のとおり、VUCAの時代となり、今後も急激な環境変化が起きることは間違いありません。
加盟店の視点で考えれば、危機下におけるフランチャイズ本部の姿勢の違いは、今後、加盟するフランチャイズチェーンを選択する際の重要な要素になるのでしょう。
私が加盟希望者にアドバイスする機会があれば、「コロナ危機時の本部サポートの内容」は必ず確認するよう助言します。
フランチャイズ本部としては、危機発生時こそ、加盟店の信頼を得られるよう、加盟店支援を積極化させていくことが求められるのです。
そのためには、フランチャイズ本部自体が盤石な経営基盤、財務基盤を構築しておかなければなりません。
これは、短期的に実現できる取り組みではありません。
だからこそ、これを実現したフランチャイズ本部は、加盟店の信頼を得ることができるのではないでしょうか。
なお、加盟者との信頼関係を構築するために重要な役割を果たすスーパーバイザーの教育方法や制度運用方法について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
まとめ
以上、ポストコロナ時代に求められるフランチャイズ本部の要件をご紹介しました。
新型コロナ問題により、情報化と国際化が進む中で企業が求められていた課題が改めて顕在化されました。
技術革新や情報化、国際化は今後ますます進んでいくことでしょう。
そうなれば、急激な環境変化が起きる頻度も当然に増えていくことになります。
これからは、環境変化に一定程度適応できるビジネスモデルと、危機下においても加盟店支援を積極化できる経営・財務基盤を築き上げたフランチャイズ本部が、加盟希望者から選ばれる本部になるのではないかと考えます。
目先のコロナ対応も重要ですが、中長期的に加盟希望者に選ばれるフランチャイズ本部となるための一歩を、今踏み出すことがより大切なのではないでしょうか。
なお、フランチャイズ本部つくりや成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。