フランチャイズ契約は本部が構築したビジネスモデルを加盟店が活用して、営業活動で獲得できた利益を分け合う契約形態です。
契約期間やロイヤリティ額(率)が定められています。
しかし長期の営業活動の中で、時代の変化と共に根本のビジネスモデルが陳腐化する、若しくは加盟者が変化に対応できず、互いにベクトルが合わなくなってくることも多々あります。
今回は、フランチャイズ契約を終了させる(満了・中途問わず)際に発生するトラブルの事例やその考え方について触れていきます。
なお、フランチャイズ本部つくりや成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
経営が赤字で加盟者側が離脱を検討した判例
加盟者が赤字の場合、営業活動を継続することは加盟者にとって苦痛でしかありません。
しかし本部は一定のロイヤリティが発生するため利益が確保できます。
ここで取り上げる判例の争点は本部の投資回収にありました。
開業から5年経過の店舗であり、ビジネスモデルから本部の投資回収ができており、「解約・違約金を請求することは公序良俗に違反する」として、解約金・違約金請求の条項は無効の判決が出ました。
今回の判例では加盟者側の主張が概ね認められました。
解約金・違約金を支払わずにフランチャイズ契約を期中に終了させることができました。
しかしこれらの裁判では多くの証拠資料を基に時間をかけて検討された判決であることを見逃してはいけません。
特に加盟者側が常日頃から適切な運営であったからこその結果なのです。
加盟者が心得ておくべきこと
①本部指導に忠実であり、逸脱した行為は無かったか
本部のマニュアルやSV指導に忠実にオペレーションを完遂した結果、赤字が続いていたのであれば、ビジネスモデルや立地に問題があったと解釈できます。
逆に同じ売上高や同様の立地で他に利益を獲得できている店があれば説得力がありません。
経費の無駄遣いをしている加盟者側の経営努力不足となり、これでは解約金・違約金の正当性が認められます。
②フランチャイズ契約書の規定通りの経営であったか
今回のケースでは解約金・違約金の無効を争点としていますが、フランチャイズ契約書の他の条項で加盟者側に瑕疵や綻びがあれば本部より反訴されてしまいます。
売上金送金の遅延等の発生、商材等の仕入れに伴う買掛金の遅延・未払いなどの例が当たります。
経営は苦しくとも送金や支払い等は滞りなく完遂していることが大事です。
経営努力が欠如している加盟者の味方は、裁判所もしてくれないのです。
本部側が契約期間満了後の“更新”を拒否したい場合の判例
契約期間の経過とともに加盟者の意識も少しずつズレてきます。
これは本部と加盟者のコミュニケーション不足に起因するケースや、加盟者が加盟当初に描いていたイメージと異なっていたケースがあります。
とは言うものの、加盟者はフランチャイズ契約書や本部指導に則った運営をしなければなりません。
それを逸脱する加盟者は本部にとっては困った存在となってしまいます。
これが目に余った場合、本部としては、フランチャイズ契約期間満了で関係を終わらせる判断をせざるをえないのです。
契約更新の拒絶です。
しかし本部としては、本部からの契約更新の拒絶には、一定のハードルがあることを意識しておかなければなりません。
なぜならフランチャイズ契約の更新判断は、賃貸住宅等の賃貸借契約と同様に、「継続的に役務を提供する契約」とされており、信義則上、契約の更新を拒絶できない場合があるからです。
基本的には、フランチャイズ契約書における「契約の“更新条項”」の有無を問わず、継続的な役務の提供と解釈されます。
契約期間が定められていたとしても、信義則上やむを得ない事由がなければ、本部から契約更新を拒絶できないといった判例です。
本部が取れる有効な対策
①期間満了による“更新”ではなく、“再契約”の条項とする
関係が円満であれば自動更新が最も便利ですが関係を断つことができません。
再契約であれば期間満了で必ず従前のフランチャイズ契約は終了し、互いに関係継続が必要であれば再契約を結びます。
手間はかかりますが係争リスクを軽減できます。
②フランチャイズ契約の継続を拒絶する事由を明確にしておく
これは加盟者側のフランチャイズ契約や、本部指導から逸脱した行為がないかを経過観察し、詳細な記録を残しておくことです。
裁判所は証拠から判断します。
拒絶するに値する事由を強く意識しなくとも、本部指導を記録に残し、日頃から密に加盟者とコミュニケーションを取っていれば、最も説得力のある証拠になっているはずです。
まとめ
加盟者も長期に営業活動をしていると、目の前のオペレーションやお客様対応に疑問を持ち始め、利益率の低さや将来性に不安を感じることが往々にしてあります。
そこで他の業種・業態や、他のフランチャイズ本部の動きが気になり始めます。
時代の変化によって疑問を持ち始めるのは、経営者として極めて健全な思考です。
逆に本部の言われていることだけをこなす加盟者は、本部にとって最も優秀な加盟者と言えるでしょう。
しかし反面、経営者として危機に対する感度が鈍っている可能性もあります。
この相反する加盟者の思考を理解しながらも本部がしっかりとグリップするためには、コミュニケーションを密に、加盟者の声にもしっかりと耳を傾ける体制を整えることが大切です。
本部は様々な判例に学び、本部と加盟者が互いに高め合える本部構築、特にSVシステムを確立しておくことが必要だと言えます。