法定開示書面には、自社の紹介とフランチャイズシステムの概要などを記載しますが、最も重要なのは「フランチャイズ契約の要点」です。
今回はこの「フランチャイズ契約の要点」の記載の仕方について触れていきます。
フランチャイズ契約の要点
中小小売商業振興法やフランチャイズガイドラインでは、加盟希望者が正確な情報に基づいて加盟判断できるように、契約締結前に一定の情報を法定開示書面にまとめ、加盟希望者に開示・説明することを本部に求めています。
開示・説明が求められている情報の中に、「フランチャイズ契約の要点」があります。
ここでは、自社のフランチャイズ契約書の内容をわかりやすく記載しなければなりません。
具体的に記載する内容としては、以下の内容があげられます。
1.契約の名称
2.売上・収益予測について
売上予測・収益予測を提示する法的義務はありません。しかし同様の立地を参考にした予測値
は提示しなければ加盟に結びつかないかもしれません。ここでのポイントは、あくまで参考の
予測値であり、収益を保証するものではない旨をきちっと掲載して説明することです。
3.加盟者が支払う金銭に関する事項
加盟金・保証金・備品経費・設計費・研修費など、加盟者が負担するコストは数多あります。その性質や目的、支払い方法・期限など、加盟者の支払いに係る内容は丁寧に記載する必要があります。
4.売上送金等
業種・業態により売上金の扱いや送金方法が異なりますが取り扱いには十分な注意が必要です。日々の現金収入はトラブルが最も発生し得る可能性があります。私的流用・売上高隠し・不適切な経費支出の結果、キャッシュフローが回らない事態の事例は後を経ちません。FC契約による営業活動で得た「売上金」の扱いは、本来は本部の監視機能は必要です。
5.加盟者への商品供給条件等
斡旋する表品の種類、発注・納品方法、配送時間、決済方法、返品、在庫管理、価格設定、販売方法、許認可など、決めておくべきことは沢山あります。
6.経営指導
加盟時の研修から、開店後の経営指導の頻度、指導内容、指導方法など、本部が加盟者をどれだけバックアップする体制があるのかを記載します。加盟者が本部を訴える裁判沙汰で最も多い理由が経営指導不足からくる不満です。
7.使用する商標・商号
加盟者が使用できるロゴ・サービスマーク、トレードマーク等は、営業店舗に限られ、契約期間が使用可能期間とします。
8.契約期間・更新・契約解除事項 契約違反・違約金
FC契約の最も重要な項目です。更新の条件や契約解除に該当する行為、中途解約条件・解約金・違約金などを明示します。加盟希望者の中にはFC契約書の重みを理解しないまま契約してしまう方も少なくありません。事前にしっかりと説明することが重要です。
9.店舗の営業時間・休業日
経営者の働き方にも係ることです。店舗ビジネスでは人手不足が度々発生しますので、そこにかかるコストやリスクなども、情報として提示しておくべきでしょう。
10.テリトリー権
本部主導の出店が制限されるため、テリトリー権を加盟者へ交付しないことが多いと思います。テリトリー制を採用する際はその旨を記載します。採用しない場合も「該当なし・採用なし」など明確に記載する方が望ましいでしょう。
11.競業避止義務
競業避止義務とは、加盟者に対して本部チェーンと同種または類似する事業展開を禁止する条項です。
仮に、本部チェーンと同種または類似する事業展開を認めてしまうと、本部がこれまで培ってきた顧客基盤やノウハウが他事業に流用される恐れがあります。
トラブルが生じた場合には、加盟者が契約解除後に同種または類似する事業展開を独自に開始することが往々にしてあります。
このような事態を防止するためにも、加盟中、加盟後の両軸で競業避止義務を設定すると共に、違反した場合には違約金が生じるような契約形態にしておくことが望ましいといえます。
なお、競業避止義務は加盟者の事業の自由を制約することにもなることから、あまりに厳しい制約は無効となる可能性があります。
競業避止義務を有効にするためには、「禁止される事業範囲」「禁止される場所」「(契約終了後の場合)禁止される期間」を限定しておくべきでしょう。
必ずしもすべてを限定する必要があるわけではあるわけではありませんが、過度な制約とならないよう、ビジネスモデルの特徴にあわせて適正な制約となるよう配慮する必要があります。
12.守秘義務
契約期間中・契約終了後におけるノウハウ・営業秘密など、第三者への漏洩時のペナルティを記載します。
13.店舗の構造・内装 等
店舗の全てを本部が準備する契約であれば本部主導で出店できますが、物件を加盟者が準備する場合は、業者や設備資材を指定する必要が出てきます。指定通りの店舗構造であることも加盟条件にしておかなければなりません。
まとめ
上記はあくまで一例ではありますが、「法定開示書面」には概ねこれらの内容は網羅しておく必要があります。業種業態・規模、FC本部の考え方によって内容は異なります。
専門家はFC本部とヒヤリングをしながら、経験値・事例を踏まえてアドバイスできるためご相談いただければと思います。