本部は、フランチャイズ契約を加盟希望者と締結する前に、法定開示書面を提示して、丁寧に内容を説明する義務が法令で定められています。
その中で、多くのFC本部が会員となっている日本フランチャイズチェーン協会が独自で自主基準を設けてガイドラインを作成しています。FCビジネスの健全な発展を目的に活動している団体であるため、厳しい基準が設けられています。
今回は日本国内で最も厳しく運用されているJFAの法定開示書面をご紹介します。
(1)日本フランチャイズチェーン協会(JFA)の自主基準
法令に伴い、JFAでは、FC本部が十分な情報開示と説明を行い、加盟希望者が十分に理解・検討する環境を整えるための自主基準を設けています。
これは、フランチャイズシステムの健全な発展を目的としています。具体的な内容は以下のとおりです。
①フランチャイザー(本部)の開示事項
中小小売商業振興法、独占禁止法上の考え方、経営に影響のある情報の提示とその根拠
②開示方法
加盟に当たっての注意事項、経営理念・行動指針、本部の詳細、売上高・店舗数の直近4年間の推移、経営指導法、契約期間更新・解除事項、ロイヤリティ 等
③開示書面説明の方法
加盟希望者に開示する書面はJFAに提出した上で開示する。自主基準通りの内容とする。
④契約締結までの塾考期間
契約書に基づいた説明後、締結までに7日間以上の塾考期間を設ける。
⑤自主基準遵守推進体制の円滑な推進
自主基準の遵守を周知徹底、必要に応じて改善指導する。
このようにJFAの自主基準は法令より更に踏み込んで厳しく規定が設けられています。
例えば、売上・店舗数の開示は法令では直近3年間ですが、自主基準では4年間とし、塾考期間として7日間といったクーリングオフのような独自基準も課しています。
(2)法定開示書面の説明確認書
フランチャイズビジネスにおけるトラブルが多く発生していることは事実です。契約ごとである以上、疑義が生じた際に訴訟により判断を仰ぐことはよくある話です。
しかし、コストや手間暇を考えると、事前解決できることは当事者間の話し合いで解決できることが生産的です。
訴訟では必ずと言っていいほど、「言った・言わなかった」の議論に持ち込まれます。互いに証拠がないために発生する事象です。
このような事態を避けるためにも、本部は加盟者に説明し過ぎるほど説明を尽くし、その証拠を書面で残して置くことが賢明なのです。
その為、大手のFC本部では、
・誰が(氏名)・いつ(年月日・時間)・どのページ(ページ数)を説明したのか、
・何日かけて説明したのか、
などといった説明記録の詳細を記載します。
法定開示書面の内容は莫大であるため、1日だけで説明できないこともあります。
そのような場合は数日かけて説明します。
そして最後に互いに2部押印して終了です。
「法定開示書面」と言ってもFC契約書と同等に扱うのです。
(3)法定開示書面で発生しがちな問題ケース
事業計画通りに出店を進めるために、決算年度末には出店ラッシュが発生することもあります。例えば、コンビニ業界では2月末決算が多いため、年明けの1月・2月の出店数が最も多い月になります。
ここで発生しがちなケースが、法定開示書面の説明日付のバックデートや改竄です。
現場の店舗開発担当者は自身の出店予算を課せられているため必死です。
十分な説明期間(時間)を設けずに、加盟者に法定開示書面やFC契約書に押印させるケースもあるようです。
これは加盟者の不信感を招き、後の訴訟問題へと発展する由々しき問題です。
こういった事も想定して、JHAでは説明日数・説明日・熟考期間などを厳しく設定されています。
まとめ
加盟店を募り店舗数を拡大していくFCビジネスは、自社の直営店運営とは異なった大きな責任を背負っています。
ビジネス上の取引契約では最新の注意を払い、相手をリスペクトするものです。
これはフランチャイズ契約における加盟希望者に対しても同じです。
加盟者は大事な取引先であることを自覚し、適切な説明の上での契約締結が必要なのです。
「法定開示書面」は「FC契約書」に並ぶ大事な書面です。
各事業本部ごとに内容も異なるため、想定される様々な事例や経験を持ち合わせた専門家にご相談されることをお勧めします。
なお、フランチャイズ本部の立ち上げ方や成功のポイントについてついて詳しく知りたいかたはこちらのコラムをご覧ください。