国内最大のフランチャイズ本部であるセブン―イレブン・ジャパンが、加盟店との信頼関係を重視し、創業以来はじめてとなる人事評価制度の抜本的な見直しに着手するようです。
コンビニエンスストア最大手セブン―イレブン・ジャパンは売上高で評価していた人事制度を見直す。オーナー支援など40項目の業務プロセスを重視する。本部主導の画一的な店舗戦略を改め、地域特性に合う店づくりを促す。成長が鈍化するコンビニ業界でのセブンの取り組みは、他の小売りにも影響を与えそうだ。
評価制度の抜本的な変更は1973年の創業以来初めて。店舗経営にかかわる本部社員約3300人が対象で、今冬の賞与から反映する。2019年に24時間営業を巡り一部オーナーと関係が悪化したことを受け、オーナーとの連携を重視する狙いもある。
出店地区を統括する約300人の責任者(エリアマネジャー)の場合、担当地区の売上高や利益の達成度合いが人事評価の7割を占めていたが、これを3割に引き下げる。
その一方でオーナーへの経営助言や売れ筋商品の理解度といった業務プロセスを7割に高めオーナーとの連携を重視する。約3千人の店舗経営相談員でも業績評価の割合を4割から2割に下げ、プロセス評価の比重を高める。出典: セブン、人事評価で脱「売上至上」、店舗支援3300人、オーナーとの連携重視。
2020/08/14 日本経済新聞 朝刊 1ページ
コンビニフランチャイズ本部は、これまで“本部主導の画一的な店舗展開”により成長を続けてきましたが、日本フランチャイズチェーン協会が公表している資料によると、2019年度は同統計調査の開始以来、はじめて店舗数が減少する結果となりました。
この背景には、以下の2つの要因があるでしょう。
①消費者ニーズの多様化
国内経済が成熟化し、消費者ニーズが多様化する中では、全店一律の店舗づくりでは消費者ニーズへの対応に限界がある。
②コンビニフランチャイズに対する社会的なイメージの悪化
2019年に発生した24時間営業をめぐる一部オーナーとのトラブルにより、コンビニFCに対する社会的なイメージが悪化し、新規加盟希望者が集まらなくなっている。
同社は、上記問題を解決し、さらなる店舗拡大を実現すべく、
①加盟店との緊密な協議や連携による信頼関係構築
②地域特性に合った店づくり
を目的として、人事評価制度の刷新にとりかかったものと考えられます
人事評価制度は、会社が意図しているかどうかにかかわらず、自社の従業員に対する会社からのメッセージとなります。
そのため、人事評価制度と会社の経営方針に一貫性・整合性をもたせることは、従業員の行動変容を引き起こすうえでも非常に重要なポイントとなります。
同社は、これまでの反省を踏まえ、今後は地域特性に合った店づくりや加盟店との信頼関係を重視する方針を明確にしていますので、この人事評価制度の見直しは、その方針を裏付ける、従業員への明確なメッセージとなることが期待されます。
この点は、他のフランチャイズ本部も参考にすべきポイントといえるでしょう。
同社のフランチャイズシステムがどのように変化していくのか、今後の動向が注目されます。
なお、ポストコロナ時代に選ばれるフランチャイズ本部について詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。