フランチャイズシステムに関する残念なニュースが飛び込んできました。
エステ店の展開をするフランチャイズ本部が、複数の加盟者から訴えられているという事件です。
開業して半年余りで赤字が膨らみ、初期投資に費やした費用が回収できないとされているものです。
加盟者側弁護士の見解では、争点は本部の「情報提供義務違反」とされています。
今回はこのホットな情報をもとに、フランチャイズ本部における「情報提供義務違反」について掘り下げていきたいと思います。
なお、フランチャイズ本部つくりや成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
報道されている事件について
ここでは報道されている内容から、今回の論点を整理してみます。
・1年足らずで115店のフランチャイズ店出店実績
・加盟店募集資料に記載されている“可能売上高”に対する“実際の売上高”は1/10程度である
・既存店はなく、提示した売上高は同業他社の数値を参考に提示していた
・地域や立地を考慮せずにシミュレーションの売上高を提示していた
・本部が支援する集客販促策はInstagramの発信2回のみ
・最高級機材の不具合が頻繁に発生
・本部側から加盟者側に対するInstagramでの嫌がらせ行為
ここで最も驚かされるのが、1年足らずで115店ほどのフランチャイズ店が開業している事実です。
本部を立ち上げても加盟者を集めるところに苦労するのが通常ですが、ここまで急激に加盟者を集客できるのは異常値と言えます。
理由はこの本部の経営者が、他の事業でも成功され、多数のメディアにも取り上げられ、カリスマ性のある経営者のようでした。
従ってフランチャイズ事業においても集客力は抜群だったようです。
これは本部にとっては最も大きな武器です。
この最大の武器があるからこそ、丁寧な「情報提供義務」を果たさなくてもよかったことが、今回訴訟にまで至った要因となっているようです。
情報提供義務(売上予測)とは
本部と加盟候補者の間には、当然のことながら、展開する事業に関する知識・経験やフランチャイズシステムに関する情報量、契約締結に関する交渉力に、大きな格差が存在します。
特に“売上予測”については、ビジネスモデル、マーケット状況、立地条件、競合状況、店舗与件など、根拠をもって提示しなければならないでしょう。
さらに虚偽、誇大、誤解を招く欺瞞的な説明はないか、合理性・継続性があるかの点にも、本部は十分に配慮をする必要があります。
しかし店舗数が少ない段階でフランチャイズ展開する場合、売上・客数・単価などの根拠となる既存店の数値(実績)が、少ないことはあり得ます。
その場合でも提示する数値に対する根拠は、丁寧に説明する必要があります。
今回のように、同業他社の参考値を提示するだけでは、杜撰と言われても仕方がないでしょう。
企業によってビジネスモデルや持っている強み、リソースが異なるからです。
しかし今回のように既存店がなく、予測値でしか提示できない場合であっても、ビジネスモデル自体に自信があるのであれば、加盟店に対するフォローアップを手厚くすることとで、加盟店と一緒に実績を作っていくことはできるでしょう。
いわゆる0次募集といったものです。
なお十分な数の既存店実績があったとしても、売上予測は、多くの情報を集めて精緻に算出しても、正確に出せるとは言いきれないのです。
商売である以上、結局のところ開業してみなければ分からないことも多いのです。
大量の出店を続けてきた著名なフランチャイズ本部であっても、売上予測の上振れ、下振れがあるのです。
しかしだからこそ、その後の加盟店に対するフォローアップを充実させることで、加盟者の売上を本部と二人三脚で伸ばし、チェーン全体でブランド力を高めてきたのです。
まとめ
今回の事例では言えば、フランチャイズ事業のスタートから1年足らずで、115店もフランチャイズ展開できたものの、6名の加盟オーナーから訴えられているという事実は、重く見るべきでしょう。
裁判所も本部に対して仮差し押さえ命令を出している事実から考えると、一定の不法行為と損害賠償を認める流れに傾いているようにも見え、裁判の行方はしっかりと観察していく必要がありそうです。
今回は残念ながら事件となってしまいましたが、他のビジネスで成功されている本部です。
経営者のカリスマ性を武器に加盟者を集める集客力は目を見張るものがあります。
ビジネスモデルに弱点があるのであれば、事業の立て直しで克服し成功事例を積み上げて、フランチャイズシステムを成功させていただきたいものです。