フランチャイズ契約書を締結するのは熟慮を重ねてもらう必要があります。
加盟を決めた候補者の立場に立てば、将来の方向性を自己判断したこのタイミングでの気持ちは、とても高揚していることでしょう。
儲かるイメージしか、持っていないかもしれません。
しかし商売は非常に厳しいことを、加盟後も本部は説き続けなければなりません。
その商売に対する覚悟は、加盟前に念を押して確認しておきたいところです。
前回に引き続き、今回も加盟店とフランチャイズ契約締結前に、前提条件として理解しておいてもらう点について、まとめてみます。
業績予測と事業モデルの活用は加盟者の責任
本部は加盟者に、収益モデルケースや収益予測はあくまで予測であって、加盟店収益を保証するものではないことを何度も念押しして理解を求めましょう。
また、本部開発担当者による「絶対に儲かります」なんて言葉もご法度です。
商売に「絶対」ということはありませんので、このような発言は無責任にも程があります。
しかし、一定程度の情報は提示する必要があります。
少なくとも収益モデルケースです。
加盟判断の材料に過ぎないものですが、実績開示のない本部に加盟する加盟者など存在しません。
大手フランチャイズ本部(特にコンビニ業界)では最低保証制度を設けている本部も少なくありません。
加盟店が店舗運営で使う経費を引く前の営業収入に設けるケースが多いかと思います。
最低保証制度がある場合、なにを、どこまで補償するのか、疑義が生じないようにしっかりと説明する必要があります。
また、中小のフランチャイズ本部では最低保証制度を設けることはなかなか難しいと思います。
その場合も、本部が加盟者を救済する手段は、全社的な販促活動やSVによる経営(運営)指導のみであり、それ以上の救済措置はないことを明確に説明しておく必要があります。
契約期間と継続・フランチャイズ契約終了
契約期間は、フランチャイズ契約の終了が近づいてこなければ、本部と加盟者とも、なかなか意識しないものです。
しかし契約期間の管理は、フランチャイズ本部にとって非常に重要な管理項目です。
店舗ごと、加盟者ごとに確実にマスター管理しましょう。
少なくともフランチャイズ契約満了の1年前から継続の協議をする必要があるからです。
ここで契約期間に触れる意図は2つの側面があります。
①フランチャイズ契約の継続や解約のイニシアチブを本部が握る重要性
②加盟者の覚悟を確認する重要性
①は、フランチャイズ契約の継続か終了かの主導権は本部にある点を意識していただきたいということです。
加盟者は満了時に、「契約終了」を選択する権利が当然にあります。
しかし逆に、無条件で継続する権利がある訳ではないのです。
つまり考え方や方向性が異なる加盟者とは、ビジネスパートナーと言えないため、本部よりお断りするケースがあるということです。
②は、最も多いのは5年程度の契約ですが、 それにしても相当の覚悟が必要であることを、加盟者に再認識してもらう重要性です。
フランチャイズビジネスでは、加盟者に安易に解約され、店舗が閉店すると、チェーン全体の信用にかかわるため、中途解約には違約金が課されます。
なので、いったん契約したとなれば、途中で止めることはできず、中途解約は多額の違約金が発生することを強く認識してもらいましょう。
多額の投資を行い、その後の生活をこのビジネスに託すということは、加盟者には「チェーンの一員となって契約期間をまっとうする覚悟をもってもらうこと」が重要であり、その説明と確認が本部には必要なのです
店舗物件に対する責任
最後に店舗物件について触れておきます。
法人を中心に加盟者を集めているフランチャイズ本部の場合、出店する店舗物件は加盟店側に属していることが多いでしょう。
加盟者所有物件である場合や加盟者が家主と賃貸借契約を結ぶケースです。
物件に対する責任は全て加盟者側にあります。
本部はフランチャイズ契約書の内容に沿って、加盟店だけに目を向けていればいいと思いがちですがそうはいきません。
加盟者の自社物件であろうと自己賃貸物件であろうとトラブルは発生します。
物件トラブルは店舗運営の継続が困難な場合もあります。
物件に対する主導権が加盟者側にあるからこそ、店舗を失うことのない様にしっかりと加盟店と握っておく必要があります。
物件トラブル事例
①加盟者の賃料滞納
②家主からの退去依頼
③都市計画等による公用収容
④店舗建物や駐車場等の補修・メンテナンス責任
⑤周辺住民とのトラブル
責任は加盟者側にあるとしても、本部収益性やブランドイメージもあり、本部として看過できないこともあります。
フランチャイズ契約書で全てを網羅しているケースは少ないと思いますが、フランチャイズ契約期間は加盟者の責任において物件を正しい状態で確保することを、何らかの形で約しておくことが必要でしょう。
まとめ
フランチャイズ契約書は万能ではありません。
しかし契約書を読み合わせる前に、ワンクッション立ち止まって考える時間はあっていいと思います。
それだけ慎重に考えている姿勢を示すことも、信用される本部と言えるのではないでしょうか。
ぜひ今回のポイントを参考に、想定できるトラブルには万全に備えておいていただければと思います。