近年、デジタル化の進展にともない顧客ニーズの変化が速くなったこと、グローバル化により競争相手が増えたこと、技術革新のスピードが速くなり製品の陳腐化が速くなったこと等の理由から、商品のライフサイクルが短くなっています。
これは、ビジネスモデルも短命になってきていることを意味します。
特に特定の商品・サービスに特化したビジネスモデルは、どこから競合が現れるかわからない時代です。
同じ商品・同じサービスの提供だけで、長期的に繁栄するのは困難な時代です。
今回は、ビジネスモデルの再構築を考える上で、自社が戦う場所を再定義するために本部が「動き」、加盟店へ新たな販売戦略を提案するためのヒントを見つけていきたいと思います。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
1.新たな販路を開拓するキーワードは「動く」
小売業・飲食業・サービス業は立地産業とも言われます。
商圏(マーケット)がどれだけの規模であるのかは非常に重要です。
しかし、消費者の購買チャネルが急速に広がっている時代に、店舗を構えた「立地」にだけ頼り、お客様をその立地で待ち続けることだけで、企業の姿勢として十分でしょうか。
新たな手段(販路)を持っていなければならない時代ではないでしょうか。
以下、新たな販路を獲得している例を挙げます。
ネットとリアル
企業によっては、ネットとリアルの両方で顧客を抱え込む「オムニチャネル戦略」※をとる企業もあります。
しかし必ずしも全てが成功している訳ではなく、非常に難しい戦略です。
とはいえ、一人のお客様が複数の購買拠点を持つことが当たり前になりつつあり、難しいけれど必要な戦略と言えます。
※オムニ:全ての、あらゆる チャネル:経路
稼ぐタクシードライバー
タクシードライバーは、歩合の要素が非常に大きい商売です。
同業者間の競争が激しく、景気にも左右される非常に厳しい業界です。
さらに今後も新たなモビリティビジネスの発達が予想されており、益々厳しさは増していくと言われています。
しかしそのような厳しい競争下でも、人並み以上に「稼ぐドライバー」が存在します。
乗客を獲得する王道の手段は「流し(動く)」だそうです。
人の流れに仮説を立て、街中を走りながら乗客を獲得するようです。
駅前等の一定の場所に留まらない戦術です。
走れば走るほど、あらゆる場所で道を覚え、自分の戦う場所(仕事場)がどんどん拡大していくと言われています。
自分のマーケットが拡大していくと、乗客を降ろして次の乗客を乗せるまでの時間も短くなっていくそうです。
これが稼ぐドライバーの極意だと言われます。
「オムニチャネル」と「稼ぐタクシードライバー」の共通点は、自分の得意とする商品・サービスをそのままに、事業領域(販売チャンス)を自ら獲得している、創り出している、ということです。
お客様を待つのではなく、自らお客様へ近づいていく「動き」があることです。
2.店舗ビジネスにも「動き方」はある
これまでの店舗ビジネスでは、「よい立地を確保すること」に主眼が置かれがちでした。
しかし、昼間・夜間人口が多い、歩行者や交通量が多いといった恵まれた立地は賃料が高すぎてどうしても損益分岐点が高くなるものです。
そこでこれからは、店舗ビジネスといえど、お客様の居るところへ出向く行動力が必要ではないでしょうか。
例えば、巷で拡大してきている「移動販売・キッチンカー」もその一つです。
新たな人件費も車両の準備も必要ですが、販売場所の提供等を含めてパッケージングされたものが増えてきています。
「移動販売・キッチンカー」は、お客様を獲得して売上を確保すると同時に、自店へお客様を導く販促効果もあります。
実際に、日中人通りのほとんどない立地にある飲食店が、売上の頭打ちを打開するため、移動販売を始めた例があります。
都心のオフィス街へ、キッチンカーで週2回ランチのみ出店したところ、たちまち人気となり「店舗にも行きたい」という新たなお客様を店舗へ誘導することに成功したのです。
そしてもう1つは、「ECサイト」の活用です。
消費者がECサイトで購買する理由の一つは、自分時間の獲得です。
時間を大事にする意識が高まっているからです。
わざわざ店へ足を運ぶ手間と時間を省くためです。
ECサイトを構築・活用することも、新たな販路を自社に作るという意味においては、オムニチャネルやタクシードライバーと同様であり、自らお客様の方へ「動く」戦術と言えるでしょう。
なお、ポストコロナ時代に選ばれるフランチャイズ本部になるために必要なことを詳しく知りたい方は、こちらのコラムもあわせてご覧ください。
まとめ
立地に頼ったビジネスは、基本的に「待ち」の商売と言えます。
変化に対応するためには、店舗ビジネスとはいえ、「動く」商売も取り入れていくことを考える時期にきているのではないでしょうか。
そして動くことはチャンスを掴む手段であっても、チャンスを逃すことはないと言えます。
つまり「動く」ことに、マイナスはありません。
加盟店へ売上獲得の手段を提供するのはフランチャイズ本部の役割です。
常にビジネスモデルの再構築をするつもりで、フランチャイズ本部がアクティブに「動く」姿勢を加盟店へ見せていただきたいと思います。