フランチャイズ本部と加盟店の関係は、業種・業態、チェーンの理念によって大きく異なります。
一般的に、コンビニのような均一的な商品・サービスの提供がビジネスモデルの上で重要な本部は、加盟店を厳しく統制しています。
しかしそれとは逆に、加盟店の自主性を重視する本部もあり、中には看板までも加盟店の独自性として、独自の看板を推奨している例もあります。
そこで今回は、これからの時代に合った「本部と加盟店の関係」について探っていきたいと思います。
「個の時代」が到来した
フランチャイズ・システムは、本部が中心となりビジネスモデルを確立させ、資本も個性も異なる加盟店を統率するビジネスです。
第三者から見るとチェーンとしては1つの集合体です。
しかし加盟店それぞれ とは個別に契約を結んでおり、当然ながら加盟者自身は隣の加盟者と一心同体ではありません。
従ってそれぞれの加盟者は、自店の収益や成長・生活基盤だけを考えればよく、チェーン全体の心配をする必要はありません。
チェーン全体の成り行きを心配するのは本部の役割です。
これはプロスポーツ選手と同じです。
チームのことを考えるのは監督でありコーチ、もしくは球団のフロントです。
選手とは個人契約であるため、選手は自分のプロとしての年俸や生活が最優先です。
だからといってチーム(チェーン)がまとまらないわけではありません。
それをプロスポーツの世界は証明してくれています。
常勝軍団と呼ばれるプロチームがあるのはその証です。
プロ野球選手は各々が自営業者です。
自分の成績が年俸や契約年数に影響します。
本来であればチーム内であっても他人の成績など関係ありません。
しかし選手のインタビューを聞いていると二言目には「チームの勝利のために」です。
選手には専門のポジションや打順があって、各々がそのポジションや打順で求められる役割を果たせば勝利に結びつくと知っています。
チームプレーの中にも役割があるのです。
常勝軍団であるほど、実力のある個性の強い選手が集まっていますが、戦う時は一致団結しています。
これをフランチャイズ・システムに置き換えると、
・店舗オペレーションや営業活動をマニュアルに沿って運用する
・出店エリア内でのブランド価値を守る
といったものが加盟店の役割であって、
・新商品・サービスの開発やシステムのブラッシュアップ
・販促活動によるブランド価値向上を担う
といったものが本部の役割となります。
これらの互いの役割がきっちりと果たせるようになれば、常勝軍団を作り上げることができるのです。
本部の統制力がより高度化する時代
自社ビジネスモデルの拡大を目的としたフランチャイズ・システムにおいて、加盟店の独自性を尊重し過ぎるあまりに統率の取れないチェーンは弱体化します。
しかし一方で、本部による締め付けだけで統率する組織は、軍隊でない限り不可能でしょう。
時代の変化で「個」を尊重しながらも、一つの仮想組織として統制しなければならないこの組織体制の維持は、本部にとって非常に難しい時代となりました。
統制力がより高度化したと言えます。
これらは、国レベルで考えた場合におけるコロナ禍のパンデミックに見られる、国による国民コントロールと似ています。
社会主義によるロックダウンと民主主義によるロックダウンの難しさなどの問題と構造は同じではないでしょうか。
この統制が高度化した時代でのFC本部は、先人の統制方法を否定しながらも、独自の加盟店コントロール手法を考えなければならないと言えるでしょう。
まとめ
全てを同じ内容で制度化してしまうやり方は時代にそぐわないと言えます。
しかし各々が好き勝手に行動していいはずもありません。
このバランス感覚が、「個の時代」の到来とともに、非常に高度化しているのは間違いありません。
人は「個の尊重」を求めながらも優れたリーダーシップも求めます。
この矛盾の解決は、フランチャイズ組織や強固なネットワークを構築しようとした本部企業の宿命であり、自社の業種・業態、チェーンの理念を元に、それぞれのフランチャイズ本部が試行錯誤していくしかないのです。